さまざまな展開で多種多様なプロジェクトが公開される仮想通貨業界の中でも通貨価格を法定通貨とペッグさせた通貨銘柄に対する注目が高まっています。
ペッグ通貨やステーブルコインと呼ばれるこれらのアルトコインの中で、最も知名度と評価が高いUSDT(Tether/テザー)を取り上げ他のステーブルコインとの違いを含めて紹介します。
USDT(Tether/テザー)とは?
ボラティリティの大きな金融商品としての側面ばかりが注目される傾向にある仮想通貨の中で、市場価格を米ドルと連動させ安定させることで実体経済とのリンクを図るステーブルコインとして開発され2015年に公開されたのがUSDT(Tether/テザー)です。
仮想通貨は発行国が資産価値を担保する法定通貨と異なり、「国や金融機関の影響も受けない完全に独立した通貨」として開発されましたが、投機性の高さが災いし実体経済とのリンクが難しかったと言えます。
法定通貨との等価交換を担保することで資産価値の安定を図るのがペッグ通貨やステーブルコインと呼ばれるもので、Tetherは1USDT=1USDを担保する米ドルのステーブルコインです。
発行元 | Tether Limited |
通貨単位 | USDT |
発行上限 | 上限設定なし |
発行数 | 40憶7,119万3,568 USDT (2019年9月9日現在) |
Tetherが一般的な仮想通貨と異なるのは中央集権体制で運営が行われている点で、購入者がTether社に米ドルを入金すれば同量のUSDTの発行、USDTを入金すれば同量の米ドルへの現金化を行う承認アルゴリズムProof of Reserveを採用しています。
現金化と同時にUSDTはバーン(焼却)され、USDTの市場流通量とTether社の裏付け資産高の均衡を保つことで、ステーブルコインとしての資産価値の担保が行われTether 社は米ドル保有高を毎日公表し支払い能力を示すことでTetherへの信頼を維持しています。
2019年9月9日現在Tetherの時価総額は米ドル建4,070,718,901ドル(435,475,331,220円)、市場価格は1USDT=0.999883ドル(106.97円)で、仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第6位にランキングされています。
USDT(Tether)にはERC20とOmniの2種類ある
現在市場には、ビットコインのブロックチェーン上に存在するOmni layerのTetherと、イーサリアムのブロックチェーン上に存在するERC20のTetherが存在します。同一銘柄でありながら2つのタイプの通貨が存在するのは取引を行うのに当たって非常に面倒ではあるものの、実際にマーケットでは2つのTetherの取引が行われています。
Tetherの発行はTether社が行いますが、実質的運営は仮想通貨取引所Bitfinexの運営を行うiFinex社が行っており、Bitfinex・Poloniex・Bittrex・Binanceなどの海外大手仮想通貨取引所の基軸通貨として広く普及していることが発行プロトコル変更の要因だと言えるでしょう。
Tetherが公開当初に利用したOmni layerはトランザクション速度が遅いことが流動性向上の妨げとなっていたため、仮想通貨取引の基軸通貨として能力不足であったことは否めません。
そこで2018年1月からトランザクション速度と手数料の圧縮が行えるイーサリアムのブロックチェーンを利用したERC20を発行プロコトルに追加し、新規発行を行うと共にTetherを取り扱う取引所でOmni layerからERC20へのプロトコルの置き換えが行われています。
しかしプロトコルが異なればウォレットアドレスも異なるため、使用していた取引所のアドレスにOmni layerのTetherを送金しても着金しませんし、最悪の場合消滅する可能性もあるので注意が必要です。
ERC20とOmniの2種類の見分け方
取引を行うTetherや送受金に利用するウォレットがOmni layerとERC20のどちらのプロトコルによって形成されているのかは、ウォレットアドレスを見れば確認することができます。
プロトコル別のウォレットアドレスは次のポイントを確認することで見分けられます。
- Omni layerベースのアドレス:1又は3で始まる
- ERC20ベースのアドレス:Oxから始まる
USDT(Tether/テザー)のメリット
プロコトルをERC20ベースに置き換えることでトランザクション速度の改善に成功したTetherには、トランザクション速度以外にも次に挙げるメリットが存在します。
- ステーブルコインのため仮想通貨のなかでは価格が安定している
- ペッグ通貨のため法定通貨への置き換え時のコストを抑えられる
- 多くの仮想通貨取引所の基軸通貨として取り扱われている
上記のメリットはTetherが世界の基軸通貨ともいわれる米ドルにペッグしたステーブルコインであることに起因していると言えるでしょう。法定通貨との等価交換を担保するステーブルコインであるため、Tetherの市場価格はボラティリティの大きな他の仮想通貨銘柄と比べると抜群の安定感を見せる通貨銘柄だと言えます。
また他の仮想通貨銘柄の場合は法定通貨への置き換え時に手数料が生じますが、米ドルとの等価交換を担保するTetherであれば仮想通貨から法定通貨への置き換えコストを大きく抑えることが可能です。
仮想通貨の市場価格が下落トレンドにある場合に法定通貨への置き換えが行われますが、他の仮想通貨から直接法定通貨へ置き換えるよりもTetherを介して現金化することで手数料が抑えられることから、Tetherは仮想通貨のリスク回避通貨としても活用されています。
非常に多くの仮想通貨取引所で基軸通貨として採用されることでTetherはビットコインに代わる仮想通貨の基軸通貨として活用されるのではないかと考えることもできるでしょう。
USDT(Tether/テザー)のデメリット
ステーブルコインとして高く評価されるTetherですが、中央集権体制で運営されるためTether社の資産状況が通貨の信用に直結し、カウンターパーティーリスクが高いことがデメリットだと言われています。
カウンターパーティーリスク
仮想通貨を含む金融取引のなかでカウンターパーティー(取引相手)に起因する、債務不履行リスクをカウンターパーティーリスクと呼びます。
Tetherがステーブルコインとして機能するためには1USDT=1USDでの等価交換の担保が絶対条件となり、米ドルとの等価交換の信用はTether社が流通するTetherと同量の裏付け資金を保有していることが大前提となります。
裏付け資金不足が発生すると米ドルとの等価交換が不可能となり、Tetherのステーブルコインとしての信用が失われUSDTの下落が生じる可能性があることがTetherにおけるカウンターパーティーリスクだと言えるでしょう。
事実、Tether疑惑とも呼ばれる裏付け資金の不正流用疑惑が存在します。
テザー疑惑とは?
発行したTetherと同量の裏付け資金を保有し米ドルと等価交換を担保することで、Tetherのステーブルコインとしての信用が確立されていますが、裏付け資金の26%がTether社の関連会社であるCrypto Capitalへ資金流用されたことが2018年に発覚しました。
裏付け資金の不正流量は仮想通貨取引所Bitfinexを運営するiFinex社が行ったものですが、iFinex社とTether社がグループ企業であることやBitfinexが2019年にトークンを発行したことで不正流用の補填を行ったのではないかと言われています。
不正流用疑惑で司法当局によって口座凍結された26%は8憶5,000万ドルに相当することに対し、Bitfinexの発行トークンの総額が10億ドルであったことや調達資金の運用手段に「債務返済を含む事業資金としての使用」がホワイトペーパーに明記されていることからTether疑惑と呼ばれています。
USDT(Tether/テザー)以外のステーブルコインを紹介
ステーブルコインは法定通貨担保型・仮想通貨担保型・無担保型の3つに大別され、法定通貨担保型のペッグ先として米ドル・日本円・ユーロ・人民元などが挙げられますが、Tether同様米ドルのステーブルコインとしてTrueUSD・Gemini dollar・Paxos Standardが存在します。
TrueUSD(TUSD)
TrueUSDはERC20を利用した仮想通貨でセキュリティートークンの発行を行うTrustToken社が発行しています。通貨単位はTUSDで2019年9月9日現在の発行枚数198,639,735 TUSD、仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第36位にランキングされています。
Gemini dollar(GUSD)
Gemini dollarはERC20を利用した仮想通貨で、アイデア盗用訴訟によりfacebookから6,500万ドルの和解金を勝ち取ったウィンクルボス兄弟が運営する仮想通貨取引所Gemini社が発行しています。通貨単位はGUSDで2019年9月9日現在の発行枚数8,508,172 GUSD、仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第346位にランキングされています。
Paxos Standard(PAX)
Paxos StandardはERC20を利用した仮想通貨で、ブロックチェーンを利用した金融サービスや仮想通貨取引所を運営するPAXOS社が発行しています。通貨単位はPAXで2019年9月9日現在の発行枚数236,367,562 PAX、仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第32位にランキングされています。
USDT(Tether/テザー)が購入できる仮想通貨取引所
Tetherは現在日本国内の仮想通貨取引所では取り扱いが無いため、Tetherを購入するためには海外仮想通貨取引所を利用する必要があります。
大手海外仮想通貨取引所では、ほぼ全ての取引所にて購入することが可能です。取り扱い通貨が多く、手数料が安い海外取引所のおすすめは「バイナンス(Binance)」です。
バイナンスの口座開設方法は【Binance(バイナンス)の口座開設、登録、本人確認、二段階認証のやり方】を参考にしてください。
その他の海外仮想通貨取引所については【海外の仮想通貨取引所おすすめランキング!】で比較をしていますので、自身に合った取引所を見つけてください。
また、バイナンスで仮想通貨を購入するためには国内仮想通貨取引所にてビットコインなどを購入し、送る必要があります。初心者の方には「コインチェック」がおすすめです。コインチェックからビットコインの送り方は【コインチェック(Coincheck)の送金方法、受け取り方法を徹底解説!】を参考にしてください。