クアンタム(Quantum)の概要
QTUMの概要 | ||
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基本情報 | 仮想通貨名 | クアンタム(Quantum) |
ティッカーシンボル | QTUM | |
発行開始年月 | 2016年12月 | |
主な利用用途 | 送金・決済・プラットフォームの構築・イーサリアムプラットフォーム上におけるdApps(分散型アプリケーション)の開発 | |
発行状況 | 発行主体 | なし。プログラムによる自動発行 |
発行方法 | ブロックチェーンの追記作業(マイニング)に対する報酬として新規発行される | |
上限発行量 | 107,822,406.25QTUM | |
発行可能数の変更 | 1億QTUMから毎年1%ずつ上限発行量が増加する | |
発行予定・発行条件 | 公開当初、最初の5000ブロックまでは1ブロックごとに2万QTUMが生成された。その後は1ブロックを生成するごとに、マイナーへの報酬として4QTUMが発行される。また985,500ブロック生成されるごとに報酬が半減する半減期が設定されている。 | |
価格移転記録 | コンセンサスアルゴリズム | MPoS(Mutualized Proof of Stake) |
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クアンタム(Quantum)の発行主体(財団など)について解説
クアンタムに発行主体は存在しません。クアンタムはプログラムにより管理され、発行も自動で行われます。クアンタムはオープンソースで公開され、誰もが発行に携わることが可能です。
ただしクアンタムにはクアンタム財団(Quantum Chain Foundation)という管理主体が存在します。クアンタム財団はシンガポールに拠点を置く財団です。クアンタムのブロックチェーンを開発しました。現在はクアンタムの開発をリードするほか、クアンタムに関する情報発信を行っています。
クアンタム(Quantum)のCEOについて
クアンタム財団のCEOはパトリック・ダイ氏が務めています。パトリック氏はクアンタムの創始者でもあります。
パトリック氏は中国科学技術大学在学中の2012年にビットコインのマイニングを通して仮想通貨業界に参加しました。中国の大手IT企業であるアリババでデジタルエンターテインメント部門のチーフを務めていたこともあるエンジニアです。
クアンタムの創始者であるほか仮想通貨ファクトム(Factom)のテクニカルアドバイザーや仮想通貨ヴィチェーン(VeChain)のCTOを務めるなど、仮想通貨分野で幅広く活躍しています。
またパトリック氏はブロックチェーン技術を用いて軌道通信プラットフォームの能力を活かしたアプリケーション開発を行えるようにするスペースチェーン(SpaceChain)にもパートナーとして参加しています。
若くしてブロックチェーンの分野で精力的に活動することから、パトリック氏はアメリカの経済誌フォーブスが認定する「30 under 30(30歳以下の30人)」に選ばれました。
クアンタム(Quantum)のCTOについて
共同創設者としてパトリック・ダイ氏と共にクアンタムを開発し、現在もリード開発者を務めるのが、ジョーダン・イールズ氏です。ジョーダン氏はアメリカ合衆国オクラホマ出身のソフトウェア開発者です。13歳のころからソフトウェア開発の分野に携わってきました。
ジョーダン氏は仮想通貨に対して強い関心を抱いており、過去におよそ100以上のアルトコインを分析。いくつものアルトコインで脆弱性を発見しています。
ジョーダン氏はパトリック氏と共にクアンタムの創設と開発に従事するほか、スマートコントラクト技術の普及活動を行うスマートコントラクトセキュリティアライアンス(Smart Contract Security Alliance)の共同議長も務めています。
クアンタム(Quantum)のその他主要人物について
クアンタム財団には、様々な企業・投資家が出資を行っています。それだけ将来性を高く評価されているということの表れとも言えるでしょう。
中でも有名な出資者として、ロジャー・バー氏が挙げられます。ロジャー氏はアメリカ合衆国のカリフォルニア州に生まれ、25歳のときにはコンピューターの部品事業で成功を収め、資本家となっていました。
そしてビットコインが開発されて間もない2011年ごろから仮想通貨関連のスタートアップに積極的な投資を行っています。当時出資を受けた事業には仮想通貨リップルの運営を行うリップル社や世界でも有数の仮想通貨取引所であるKraken(クラーケン)などがあります。
この初期の投資による功績から、ロジャー氏は今でも「ビットコイン・ジーザス(ビットコインのイエス・キリスト)」と呼ばれます。
2017年8月にビットコインがスケーラビリティ問題の解決方法を巡って分裂すると、ロジャー氏はブロックサイズを拡大したビットコインキャッシュの支持を表明。積極的にプロモーションしています。
ロジャー氏は今でも仮想通貨業界で大きな存在感を持つ投資家のひとりです。出資者のひとりとして、今後のクアンタムの普及活動に貢献することが期待できるでしょう。
クアンタム(Quantum)の発行方法、発行条件
クアンタムはプログラムによって、ブロックを生成するごとにマイナーへの報酬として新しく発行されます。最初の5000ブロックでは1ブロック生成するごとに2000QTUMが発行されました。このとき発行された合計1億QTUMのうち51%がICOで販売されました。5000ブロック以降は、1ブロックを生成するごとに4QTUMが発行されます。
またクアンタムは上限発行量が1億QTUMに設定され、毎年1%ずつ上限発行量が増えていく仕組みになっています。すなわち、事実上上限発行量が存在しません。
更にクアンタムには985,550ブロックが生成されるごとに、半減期が設定されています。公開当初はブロック生成時間が128秒に設定されていたため、985,550×128=1460日、つまり約4年で半減期を迎える計算でした。
しかし2021年4月30日に実施したハードフォークによってブロック生成速度が32秒に短縮されたため、半減期が早まることが予想されています。
クアンタム(Quantum)のコンセンサスアルゴリズム
クアンタムはコンセンサスアルゴリズムとして、MPoS(Mutualized Proof of Stake)を採用しています。MPoSは名前の通り、イーサリアムなどの仮想通貨で採用されるPoS(Proof of Stake)を発展させたものです。
Mutualizedとは日本語で「相互化された」という意味の言葉です。MPoSはスマートコントラクト技術を用い、ブロック生成時に支払われる手数料を他のマイナーと共有する仕組みです。またブロックを生成したマイナーは生成後すぐに新規発行された仮想通貨を受け取れるわけではなく、500ブロックを生成後に受け取る仕組みとなっています。
メリット
MPoSはPoSと比較して、多くのマイナーが手数料の共有を介してブロックの生成に関与し、報酬の受け取りにも時間を要します。人手と時間を用いることで、MPoSはより高いセキュリティを確保することができています。
従来のPoSではブロックを生成したマイナーが報酬とトランザクション手数料をすべて受け取ることになっているため、そのタイミングで攻撃をすれば不正にネットワークを攻撃することができました。
しかしMPoSでは手数料をマイナーで共有するため、ネットワークを攻撃するために共有したすべてのノードを攻撃しなくてはなりません。またもし攻撃に成功しても、ブロックの生成と報酬の支払いにタイムラグを設けているため、検証することで不正を防ぐことができます。
デメリット
MPoSはPoSを発展させたコンセンサスアルゴリズムであるため、デメリットもPoSと同様のものがあります。
PoSは多くの通貨を保有すればするほどブロックを承認する権限を得やすくなる仕組みです。そのためマイナーが多くなると通貨の流動性が低下するおそれがあります。また保有量が特に多い一部のマイナーが独占的にブロックを生成するケースもあります。
クアンタムではMPoSのデメリットを克服するために、ステーキングを実装しました。ブロックを生成する権利のない利用者でもステーキングを利用することで間接的にマイニングに関与することができます。
クアンタム(Quantum)のプロジェクトポリシー(発足の目的・背景など)
クアンタムは現在主流となっているビットコインとイーサリアムの長所を組み合わせ、ビジネスでも利用可能なパブリックブロックチェーンを開発するプロジェクトです。
ビットコインの長所はUTXO(Unspent Transaction Output)と言われる残高管理方式です。UTXOでは他の仮想通貨や電子マネーのように「いくら使った、いくら受け取った」というようなデータは利用されません。その代わりにトランザクション全体を解析し、まだ使われていないコインの総量から保有量を算出します。
UTXOはアカウントに直接送金履歴を記録するわけではありません。そのためトランザクションの追跡が困難になり、セキュリティの面で強みがあります。匿名性も確保できます。
イーサリアムの長所はスマートコントラクトです。契約を自動化する技術によって従来人手が必要だったものをdAppsというもので自動で行えるようになります。dAppsは多くの分野で注目されており、イーサリアムのブロックチェーンを活かして盛んに開発されています。
しかしUTXOとスマートコントラクトは本来組み合わせることができません。UTXOは仕組みが複雑で、スマートコントラクトに組み込むことができないのです。そこでクアンタムはアカウント抽象化レイヤ(Account Abstract Layer, AAL)という技術を採用し、UTXOを行うブロックチェーン上に仮想マシンを構築、そこでスマートコントラクトを稼働させることで、両者の橋渡しを実現しました。
またクアンタムはただビットコインとイーサリアムの長所を組み合わせるだけでなく、様々な技術を組み込むことでビジネスでも利用可能なブロックチェーンを構築しました。
まずクアンタムはUTXOを採用するため、残高を管理するためにブロックチェーンをすべてダウンロードする必要がありません。そのため通常よりもデータ量の少ないライトウォレットを採用しています。ライトウォレットはスマートフォンなどでも利用ができ、利便性が高いのが特徴です。
イーサリアムのスマートコントラクトでは、開発言語にSolidityというものしか利用できませんでした。Solidityは専門性が高く、開発者にとっては高いハードルとなっています。
そこでクアンタムはQtumX86VM(QuantumX86 Virtual Machine)を使用し、CやC++、Python、Rustといった汎用性の高いプログラミング言語でスマートコントラクトを記述できるようにしています。QtumX86VMによって開発者は自分がこれまで学んできた言語でdAppsの開発が可能です。
更にクアンタムはスマートコントラクトを用い、分散型ガバナンスプロトコル(Decentralized Governance Protocol, DGP)と言われる技術を導入しました。DGPはブロックサイズの変更など、従来の仮想通貨であればハードフォークをしなくてはできなかった仕様変更を、ハードフォークを経ずに行えるようにしています。
仮想通貨は常に分裂のリスクを有しており、不安定であるために企業などが利用を躊躇していました。クアンタムはDGPを導入することでより安定したブロックチェーンとして、企業の利用を促進しています。
また技術面以外にも、クアンタムは世界6大陸に約1200のノードマシンを有しており、分散ネットワークを構築しました。世界中にノードを分散させることで、障害に強いシステム作りができています。約1200のノードマシンというのは、ビットコインとイーサリアムに次ぐ規模です。
クアンタム(Quantum)のアライアンス、過去のビッグニュース
最後にクアンタムに関連する過去の大きなニュースを紹介します。
2018年10月17日 クアンタムがアマゾン・ウェブサービス(Amazon Web Service, AWS)の中国地域部門との技術提携を発表
この日、クアンタムがTwitterでアマゾン・ウェブサービス(Amazon Web Service, AWS)の中国地域部門との技術提携を発表しました。
Qtum Blockchain Becomes Amazon Web Services Partner in Chinahttps://t.co/CIZpZwUwVV via @baidakova
— Qtum (@qtum) October 17, 2018
この提携により、クアンタムはAWSの技術パートナーおよびAWSパートナーネットワークの一員となっています。AWSの利用者はアマゾンの提供するAmazonマシンイメージ(Amazon Machine Image)というサービスを用いてクアンタムのブロックチェーン上にdAppsの開発が可能となりました。
一方、クアンタムはAWSの利用者からフィードバックを提供し、ソフトウェア開発のノウハウをあまり持たないクライアントに対してガイダンスを通してクアンタムの知名度を向上させることができます。
クアンタムとAWSは4月から技術提携に関する議論を重ねてきました。またクアンタムはAWSの提携を通して他の顧客との関係構築にも力を入れていく方針を示しました。
アマゾンのような大手IT企業でも近年はブロックチェーン分野に関心を寄せています。例えばマイクロソフトは独自のコンソーシアム型ブロックチェーンAzure(アジュール)を開発し、Azure Blockchain Serviceというクラウドサービスを提供しています。
他にもグーグルはGoogle CloudでPolygon(ポリゴン)という仮想通貨のブロックチェーンデータに対応したり、フェイスブックは独自の仮想通貨Libra(リブラ)のプロジェクトでを発表しました。
今後ブロックチェーンの利用が進めば、ビジネス向けのブロックチェーンを開発するクアンタムはより優位性を得られるでしょう。
2021年4月30日 クアンタムがハードフォークを実施
この日、クアンタムはハードフォークを実施しました。ハードフォークとはブロックチェーンのプロトコルに関する規則を緩くする形で仕様を変更するようなアップデートを指します。
特に大規模なアップデートを実施した場合、その仮想通貨のネットワークを構築するノードは最新版に更新するかを迫られるため、更新したものとしなかったものにネットワークが分裂し、結果としてブロックチェーンが分岐してしまいます。
過去にはビットコインがスケーラビリティ問題の解決策を巡ってビットコインとビットコインキャッシュに分裂、イーサリアムもハッキング被害をなかったことにするイーサリアム開発者の判断に対して意見が分かれ、イーサリアムとイーサリアムクラシックに分裂しました。
しかしクアンタムのハードフォークは事前に計画されていたものです。他の仮想通貨のようにコミュニティ内で意見の対立が起きたことによるものではありません。
2020年10月19日にプレアップデートとしてクアンタムのテストネットでブロック生成の間隔が128秒から32秒に短縮され、スマートコントラクトの応答が高速化されました。
その後テストを経てバグがないことが確認され、2021年3月26日にテストネットがハードフォークを実施、2021年4月30日にメインネットのハードフォークを実施し、「Mainnet FastLane v0.20.2」を公開しました。
ブロック生成速度の向上により、クアンタムはより実用性が高まり、ユースケースの拡大が見込めます。クアンタム財団のパトリック・ダイCEOは2021年3月26日にTwitterで「イーサリアム2.0を待つ必要はありません。4月30日には手に入ります。クアンタム・ファストレーンはイーサリアム2.0の持つ機能のほとんどを有しています」と投稿。アップデート内容に対し、大きな自信を覗かせています。
No need wait for ETH2.0, you will have it on 30th April. Qtum Fast Lane have most of the features ETH2.0 want to achieve.
— Patrick Dai (@PatrickXDai) March 26, 2021
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