仮想通貨のFUDとは?意味と読み方
FUD(ファッド、エフユーディー)とは、「Fear,Uncertainty and Doubt」の略で、恐怖・不安・疑念を抱かせるような情報を広めることで、大衆の認識を意図的に操作するマーケティング手法のひとつで、もともとはアムダール社の創業者であるジーン・アムダール氏が、自身が退職したIBM職員の営業姿勢を指摘して述べたものです。
FUDは、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に心を動かされやすいという心理的な人の特性を利用しており、仮想通貨業界のみならず、政治やPR活動、プロパカンダ、美容広告など、幅広い分野で使われています。
例えば、美容業界の場合、「(商品名)を使うと、肌に良い」というポジティブな文言よりも、「〇代は肌の老化が一気に進みやすいという研究結果が得られているので、予防する必要がある」という恐怖を感じさせるような文言によって、商品購入を促すというマーケティング戦略が取られています。
仮想通貨業界におけるFUDの目的
FUDは、サイトのアクセス数を稼ぎ、広告費を得ることなどにも利用されることがありますが、仮想通貨業界における主な目的は、「価格操作を行うこと」になります。
具体的には、取引所のハッキングや通貨の脆弱性が発覚した場合は、価格が暴落する傾向にあるため、そうした特性を利用し、フェイクニュースを流すことで、暴落による利益を得ることが狙いになっています。
仮想通貨は歴史が浅く規制の整備もまだまだ不十分なので、フェイクニュースを流し意図的に認識をコントロールし、価格操作を行いやすいといえるでしょう。
FUDの実例
コインチェックが破綻する
コインチェックは、2018年1月のNEM不正流出事件判明後、法定通貨と仮想通貨の入出金を一時停止しました。被害総額は580億円に達することが明らかになり、一部からは、「破綻間違いなし、流出した仮想通貨は補償されない」と噂されました。
しかしながら、現在は不正流出したNEMの犯人特定はできていないものの、自己資金での補償がされた後、マネックスグループが買収を行い、破綻することはなく、サービス再開に向けた取り組みがされています。
bitFlyerがハッキング被害に遭った
5/11に一時的にアクセスできない状態が一部のユーザーによる確認されたことに反応し、bitFlyerがハッキング被害の懸念があるのではと匂わすツイートをするユーザーが出現しました。
コインチェック事件もあり、一時bitFlyerの預かり資産か無事かどうかを心配するツイートが増えましたが、bitFlyer社長の加納氏が顧客資産の無事を報告するツイートを行い、事件を鎮静化させました。
Binanceが破綻する
2018年2月28日、バイナンスが緊急メンテナンスを行いました。それに対して、セキュリティベンダーでトップ規模のシェアを誇るマカフィー設立者のマカフィー氏が「バイナンスは破綻する」とツイートし、一部で物議を醸しました。
しかしながら、実際は一部データの同期が確認できない不具合がみられたためのメンテナンス措置であり、無事なにもなく復旧しました。本人に悪気はなかったものの、業界のセキュリリティ関連随一の識者の発言とあれば、パニックになる方も多かったようです。
この後、バイナンスでは「SAFU(Secure Asset Fund for Users:セキュア・アセット・ファンド・フォー・ユーザーズ)」という保証システムを導入しています。SAFUについての詳細は、【バイナンス(Binance)がSecure Asset Fund for Users (SAFU)を開始!】を参考にしてください。
Tether疑惑がきっかけで、ビットコインが暴落する
米テザー社は、米ドルとペッグするテザー(USDT)という通貨を発行しており、投資家がドルを預金することで、相当するテザーが発行されます。つまり、市場に流通しているテザー(テザー社は発行したテザー)と銀行に預金されているドル(投資家が出資したドル)残高は同等でないといけません。
しかしながら、監査機関との提携打ち切りやBitfinexとの癒着(創業者が同一人物、経営層も酷似)、関連論文の発表など悪い面が目立ち、一部からテザーはビットコインを買い支えしているのではないかという疑惑が上がっていました。
仮に、Tetherがドルに裏付けされておらずに、ビットコインが意図的に価格操作されているなら、実質価値がバブルのように弾けてしまうという不安が募りました。しかし、FSSがUSドルの裏付けを示すレポートを出してからは、そういった疑惑は薄くなっています。
Tether疑惑については、【CFTCがUSDT疑惑で、BitfinexとTetherに召喚状を送付!】や【FSSがTether疑惑に関するレポートを発表!2018年6月1日時点でのUSドルによる裏付けを示す】を参考にしてください。
中国以外のアジア諸国でもICOが規制される
インドの政府関係者が仮想通貨の使用を禁止することをほのめかす内容の発言をしたことをきっかけに、各国が続いて仮想通貨規制に走るのではないかという不安がグローバルに広がりました。
「仮にインドが仮想通貨の使用を禁止するなら、アジア各国に仮想通貨規制の波が伝播する可能性がある、そうすると価格下落は免れない」そういった不安が人々を取り巻きました。
しかしながら、実際には韓国政府がKYC(本人確認)規制、インド政府は違法なICOやトークンの取り締まりを強化する程度に留まりました。
OKExの創業者が当局に拘束された
大手取引所のOKExの創業者が詐欺の容疑で、当局に拘束されたというニュースが9月に流れました。しかし、その後、OKExの広報によって、そのような事実はないとニュースを完全否定する声明が出されました。