アジア最大のステーキングプールを構築することを目的とするプロジェクト、ムーンステーク(Moonstake)をご存知でしょうか?
今ステーキングが従来のマイニングに変わる新たなシステムとして注目を浴びています。すでにEOSやTRONといった人気プロジェクトではPOSを採用しており、バイナンスやコインベースなどもステーキングを開始しています。
今回の記事ではステーキングの基礎知識からMoonstakeのプロジェクト概要について解説していきます。
- PoSはブロックチェーン業界の課題をクリアする注目技術。
- バイナンスやコインベースなどもステーキングを開始している。
- Moonstakeはすでにサービス開始しており、今後の展開が注目される。
- 業界に精通したエキスパートや先進企業と提携済み。
仮想通貨のステーキングとは?
ステーキングの実用化開始
2009年に世界で最初の仮想通貨ビットコインが誕生し、2017年に仮想通貨バブルが到来するまで多くの通貨がマイニングというシステムを採用していました。マイニングでは取引の承認に必要な計算力を提供することで報酬として仮想通貨をもらうことができるシステムです。
一方でステーキングというシステムが実用化され始めたのは2019年だとされています。この年にTezos(時価総額2,000億円/世界10位)やCosmos(時価総額540億/世界24位)など有名な通貨がステーキングを導入しています。
また、時価総額2位のイーサリアムや13位のCardanoも今後参入予定となっており、ステーキングを採用する通貨は増えていくと予想されます。
ステーキングとレンディングとの違い
最近話題に登ることが多い仮想通貨レンディングとステーキングは似ている点はあるものの、別のシステムになっています。レンディングは保有している仮想通貨を貸し出した期間によって報酬が受け取れますが、ステーキングは保有している通貨の枚数によって報酬が受け取れます。
どちらもマイニングとは異なり、特殊な機器や先行投資などは必要ありません。仮想通貨レンディングは取引所やサードパーティの企業が運営しているケースが多いのに対し、ステーキングは仮想通貨プロジェクトそのものの一部として行われています。
ブロックチェーン業界の課題
バブルも落ち着きひと段落着いたように思える仮想通貨業界ですが、解決すべき課題はまだまだ残されています。それが、ブロックチェーン技術の向上です。
2019年の仮想通貨市場の時価総額は前年比200%となる2,371億ドル(約26兆円)を記録しました。ブロックチェーン業界の支出額とブロックチェーンの市場規模もそれぞれ前年比80%、70%と順調に成長しています。
マイクロソフトやIBM、三菱UFJ銀行など大手企業が続々とブロックチェーン業界に参入してくる一方で、市場の成長速度に技術が追いついていないという問題点があらわになってきました。
イーサリアムのネットワーク上で使われるGASという手数料が2018年ごろから右肩上がりで上昇してきており、最高値を更新し続けています。イーサリアム自体の価格の最高値は2018年であり、手数料とETHの価格に相関関係がないことから手数料高騰は技術的要因に起因すると断定できます。
増え続ける利用者によるネットワークの負荷をいかにして改善していくかが今後のブロックチェーン業界の課題となっています。
POWとPOS
そこで現在注目されているのがPoSというアルゴリズムです。従来のPoWに比べて以下のような違いがあります。
PoW | PoS | |
メリット | データの改ざんが難しい | 51%攻撃に強い |
報酬の判断事項 | 計算力の高さ | コインの保有量と期間 |
消費電力 | 高い | 低い |
ビットコインをはじめとしてこれまで多くの仮想通貨にPoW(プルーフ・オブ・ワーク)というアルゴリズムが採用されてきました。これは計算力が高い人がネットワークの取引を承認する仕組みになっており、計算力が高ければ高いほど報酬をもらいやすくなります。
一方でPoS(プルーフ・オブ・ステーク)は仮想通貨の保有量と保有している期間によって取引を承認する人を決定します。そのため、計算力の高さを競う必要がなく膨大な電力消費も防げます。
PoSではユーザーはコインを保有していれば、マイニングと同じように定期的に報酬を得ることができます。
ステーキングを採用しているプロジェクトのステーキング報酬
現在ステーキングを採用している仮想通貨プロジェクトは数多くあり、仮想通貨情報サイトCoinMarketCapによる時価総額トップ50のうち18のプロジェクトがPoSを採用(もしくは予定)しています。これらのプロジェクト全てを合わせた流通時価総額は4兆円にも上り、影響力も大きなものになっています。
PoSを採用している主なプロジェクトの利率は以下のようになっています。
プロジェクト | 利率 |
EOS | 3% |
Cardano(予定) | 15% |
TRON | 9% |
Tezos | 7% |
Cosmos | 9% |
ICON | 36% |
世界のステーキングプール
PoWを採用している通貨のマイニングは機材の準備やネット環境の整備など参入障壁が高かったため、個人の計算力を結集し一つのマイナーとして参加するマイニングプールというものが存在します。
個人ではマイニングに参加できないというユーザーを集め、最終的なマイニング報酬を分配するという仕組みになっているのですが、PoSにもこれと似たような仕組みがあります。
それがステーキングプールです。時価総額の大きい通貨などはステーキングに参加するために多くのコインを集める必要があり、資金が必要になってきます。そこで、ステーキングプールは個人の保有コインを一箇所に集め一つのマイナーとしてステーキングに参加します。
世界の主なステーキングプールには以下のようなものがあり、それぞれ扱っている通貨に違いがあります。世界の仮想通貨取引所トップ20はすでにステーキングサービスを提供しており、その他のステーキングサービスも80以上が存在しています。
一方で日本国内で利用可能なステーキングサービスは3つのみと非常に限られている上、対応している通貨も非常に少ないのが現状です。
ステーキングプール | 合計ステーク額 | 取り扱い通貨 |
Binance | 359億円 | Tron, Cosmos, Tezos, Kava, Loom |
Polychain Labs | 117億円 | Cosmos, Tezos, IRISnet |
Coinbase | 95億円 | Tezos |
Dokia Capital | 91億円 | Cosmos, Terra, Kava, IRISnet |
Stake.fish | 74億円 | Cosmos, Tezos, IRISnet, Kava, Loom |
Moonstake(ムーンステーク)が提供するサービス
Moonstake (Staking Pool)
ここからはMoonstakeについて説明していきます。Moonstakeの提供するステーキングプールはCardanoやCosmos、Tezosをはじめとした50以上の通貨に対応しています。将来的にはPoSに移行するイーサリアムにも対応する予定です。
Moonstakeはステーキングプール管理システムやモバイルアプリおよびウェブからのステーキング対応、サードパーティのウォレットからのステーキングへの対応など様々な機能を備えています。
また、CosmosとIRISnetネットワークではトップ100のバリデーター(取引を承認するユーザー)、Cardanoのテストネットのバリデーターに選出されており、各ネットワークで存在感を示しています。また、Tezosとイーサリアムのネットワーク上でもバリデーターとしてステーキング可能になる予定です。
Moonstake Wallet App
こちらはMoonstakeのモバイル向けアプリですでに利用可能となっています。ウォレットアプリとして機能し、対応通貨はビットコインやイーサリアム、ADA、EOSをはじめとした2,000種類以上です。
これらの2,000種類以上の仮想通貨の送受信はもちろん、Moonstakeとしてステーキングへの参加やQRコードスキャン、手数料の設定など様々な機能を備えています。
セキュリティ面でも暗号鍵はユーザー自身が管理するため、取引所がハッキング された際の資金流出の心配もありません。また、パスワード保護をかけたり、生体認証でのロック解除にも対応しているため、安全に仮想通貨を保管できます。
現在ではiOSとAndroidどちらのスマートフォンでも利用でき、日本語にも標準対応しています。iOSのアプリはこちら、Androidのアプリはこちらからダウンロードできます。
Moonstake Wallet Web
Moonstakeはウェブからも利用できます。Web Walletの特徴として、世界最大の仮想通貨ウォレットであるBlockchian.comと同等の技術を有している点、ユーザー自身が暗号鍵を管理する点が挙げられます。二段階認証も採用しているため、セキュリティは高いと言えるでしょう。
Web Walletでも対応している通貨の送受信やステーキングプールへの参加、さらにはアフィリエイトリンクを発行して宣伝することもできます。
対応予定のブラウザはChrome、Firefox、Safari、Internet Explorerとなっており、あらゆるデバイスから利用可能になります。
Moonstake Enterprise
こちらはMoonstakeが企業向けに提供するサービスになります。主に仮想通貨取引所をターゲットとしており、取引所にウォレットやステーキング機能を追加できるシステムを提供しています。
具体的なサービスとしては、バリデーションノードの導入や運用代行サービス、管理システムの導入サービス、企業向けウォレット導入サービス、ウェブ/モバイルウォレット導入サービスなどがあります。
Moonstake Enterpriseは今後成長していくであろうステーキング市場を見据えて、取引所など仮想通貨関連企業のシステム整備をサポートします。
Moonstake Enterprise Wallet
Moonstake Enterpriseと同様に企業向けにも高機能なウォレットが用意されています。組織用に多層型マルチシグ対応や、部署/個人毎のウォレットの一括管理機能などが備わっています。
送金ルールやユーザーの引き出し制限、リクエストの承認プロセスなどは細かくカスタマイズ可能となっています。その他にも異なる通貨に複数のウォレットを設定できたり、スケジュール支払いや財務報告書が利用可能となっており、個人向けのウォレットとの差別化が図られています。
Moonstake Enterprise Walletは現在イーサリアムに対応しています。
Moonstake(ムーンステーク)のマネジメントメンバーとパートナー企業
Moonstakeの大きな特徴として、ブロックチェーン業界を牽引してきた企業やメンバーが関わっているという点が挙げられます。彼らのこれまでの知見はMoonstakeのプロジェクトを素早く軌道に載せるのに貢献することでしょう。
Mitsuru Tezuka
手塚氏は2013年からブロックチェーンアプリケーションに関わっており、業界に精通している人物です。これまでに数多の勉強会を開催し、日本におけるブロックチェーンの本質的な知識の普及に貢献しました。
2017年にはスイスと日本でCTIAという企業を立ち上げ、フィンテック企業向けのブロックチェーン関連のコンサルティングやインキュベーションを提供しています。中でもトークンエコノミーにおける関係性やデューデリジェンスに重きを置いて取り組んでいます。
現在はブロックチェーン企業のr3と提携し、同社が率いるCordaと分散型台帳技術を活用した新たな情報管理システムTraceability as a Service(TaaS)を開発しています。
MoonstakeがADAやCENNZなどといったプロジェクトとスムーズに話を進められていることも手塚氏の運営するCTIAの参画あってのことでしょう。
Alex Hui
香港中文大学日本研究学科卒業。立教大学に留学し、2003年に三菱商事に就職(その後、メタルワンへ異動)。
メタルワンでは、1年目に中国へ新商品の開拓を成功させ、業界新聞のトップページで紹介されるなど活躍した。本件を含む功績が認められて、2006年に本社の国際 マーケット本部に移籍し、海外支社の展開戦略を担当。東南アジアやオーストラリアで大規模案件に従事し、続々と開拓。
その後プログラミングを独学で学び、2009年にアプリケーション開発会社を設立。 2012年に170チーム規模のエバーノートDevCupで勝ち抜き1位に。翌年、同じコンテストで優勝し、アメリカのユニコーン企業エバーノートのアクセラレータープロ グラムに招待されました。
2017年、ブロックチェーンを用いた事業開発を専門とするスタートアップの取締役 兼COOに就任し、事業開発を牽引。
2019年、香港にてアジア太平洋プロジェクト協会(APAC Blockchain Association)を 立ち上げに尽力、初代会長に任命されました。
技術と人的ネットワークを兼ね備えたAlex氏をMoonstakeのディレクターに据えることで、内外へのマーケティングを強めることができていると考えられます。
Chia Hock Lai
Chia氏はSwitchnovateの最高責任者兼シンガポールブロックチェーン協会の理事長という経歴を持つ方です。さらにシンガポールフィンテック協会の創設者でもあります。Switchnovateはブロックチェーンを活用した金融ソリューションを提供するコンサルティング会社で同氏はこの業界において20年以上の経験を誇ります。
以前にはシンガポール政府技術庁やシンガポール最大のスーパーマーケットチェーンが運営する保険会社で働いていました。また、シンガポール国立大学および南洋理工大学を卒業しており、シンガポール政府をはじめとした要所へのコネクションを持ち合わせています。
BINARYSTAR
BINARYSTARは東京銀座にオフィスを構えるブロックチェーンのビジネスハブです。ブロックチェーンに興味を持つ個人や企業がメンバーとして登録することでコワーキングスペースとして活用したり、業界での人脈構築に役立てることができます。
すでに東証一部上場企業の丹青社やGMOクラウドがメンバーシップ登録している他、Facebookの日本デベロッパーサークルも参加しています。さらにはEOSやRSKをはじめとする100社以上のブロックチェーン企業とも提携していて、太平洋側の市場開拓の拠点となります。
DLF Holdings
DLF Holdingはシンガポールの二部証券取引所に相当するCatalyst Boardに上場している企業です。従来はM&Eを主軸に据えていましたが、2020年3月にInfinity Blockchain Gruop(IBG)と提携したことをきっかけにブロックチェーン業界に参入しました。
M&Eの分野ではシャングリラやリッツ・カールトンなど高級ホテルの建設に携わっており、実績ある企業として知られています。
同社の株主は大手ブロックチェーンコンサルティング会社QRC Pteとなっており、ブロックチェーン業界参入の後押しになったと考えられます。
DLF Holdingは今後BC企業のエージェントとして東南アジア市場をターゲットにプロダクトを展開していく計画となっています。
まとめ
Moonstakeのプロジェクトにはこれまで数々のブロックチェーンプロジェクトに関わってきた手塚氏を始めとして国内外のエキスパートおよび企業が参加しています。
100種類以上あるPoSと5,000万人以上の潜在的なユーザーをMoonstakeという一つのプラットフォームに集約することで今後のブロックチェーン業界における当たらな投資や資産管理の可能性に繋がるのではないでしょうか。
ブロックチェーンや仮想通貨の未来に希望を持っているユーザーはMoonstake上でステーキングを行うことで効率良く報酬を得ることができます。一方、ブロックチェーン関連事業を行っている企業はMoonstakeを活用することで提供できるサービスの幅を広げることができます。
2020年5月6日追記:Bitfury社日本代表の紺野勝弥氏もMoonstakeに期待。すでにステーキングを開始している。
2020年5月6日に業界関係者限定でウェビナーが開催されました。
ウェビナーのパネラーには、BINARYSTARの代表ガリバー氏と、Bitfury社日本代表の紺野勝弥氏が登壇し、現在のブロックチェーンの課題やステーキングの今後について議論されていました。
紺野氏はすでにMoonstakeを利用しており、コスモスをステーキング中とのことです。
ウェビナーでは以下のように発言をしていました。
使用感としては、UIUXに優れ、慣れていない方も使いやすい。
Moonstakeには成長性と信頼を感じている。
一緒にアジアナンバーワン・世界ナンバーワンのステーキングサービスにしていければと考えている。
今後紺野氏がどのように関わっていくかは言及されていませんが、Moonstakeの信頼の裏付けともなるコメントを残していました。