FX取引には様々な取引方法があります。その日の内に決済を行うデイトレ―ドや、数年かけた取引を行うポジショントレードなど様々です。
FX取引と聞くと難しいマーケット分析が必要と感じる方も多いかもしれませんが、中には初心者の方でもチャレンジしやすい取引方法もあります。
この記事ではFX取引の初心者におすすめの「ドルコスト平均法」と「バリューコスト平均法」について紹介していきます。
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法は投資の初心者におすすめといわれている投資手法です。FX取引だけでなく株式や投資信託など様々な金融資産でも取り入れられている方法となります。
ドルコスト平均法の仕組み
ドルコスト平均法は、価格が変動する商品に対して毎月決まった一定の金額を投資していく手法です。
例えば、ドルコスト平均法で毎月10,000円を米ドルへ投資した際の例を見てみましょう。
1カ月 | 2か月 | 3カ月 | 4カ月 | 5か月 | 6カ月 | 合計 | 平均 | |
為替レート | 100円 | 101円 | 99円 | 98円 | 100円 | 101円 | 99.83円 | |
購入通貨数 | 100ドル | 99ドル | 101ドル | 102ドル | 100ドル | 99ドル | 601ドル | |
取引金額 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 60,000円 |
6ヶ月にわたり定額を投資し続けた結果、米ドルの平均購入単価は99.83円となりました。
最後の月に米ドルを売却すると、601ドル×101円=60,701円となり701円の利益を出すことが出来ます。
このように変動するマーケットの中で定期的かつ定額を投資していくことによって、相場が円安の時は少ないドルを、円高の時は多くのドルを買い付けていくことが可能となります。
ドルコスト平均法のメリット
ここからはドルコスト平均法のメリットについて紹介していきます。
毎月の出費が一定
ドルコスト平均法は買い付け金額が一定であるため、毎月の支出の見通しが立てやすくなります。
月によって投資に回す金額が大きくなる心配がないため、毎月捻出できる金額を設定すればよいでしょう。
マーケット動向に一喜一憂する必要がない
ドルコスト平均法を活用すると、毎回の投資で悩む必要がありません。
短期間での売買を行っている際は相場の下落に悲観的になるものですが、ドルコスト平均法は長期投資が前提の投資方法です。下落相場で口数を多く仕込めることは後々の利益に大きく寄与することとなるため、下落局面はむしろラッキーであるともいえます。
FX取引に限らず投資を行う際に、相場に一喜一憂しなくて済むという点は大きなメリットです。精神的な負担がないため、長期投資が出来る要因ともいえるでしょう。
少ない資金で投資を始められる
ドルコスト平均法では毎月の投資金額を自由に設定できるため、少ない手元資金でもFX取引を始められます。
FX業者によっては1通貨からの投資が可能となっているところもあるため、毎月100円程度からFX取引を始めることもできます。初心者の方の中には「FX取引を始めてみたいけど、いきなり大きい金額を取引するのはこわい」と考えている方も多いでしょう。そういった方でも毎月少額から取引が出来るドルコスト平均法は魅力的ともいえます。
ドルコスト平均法のデメリット
様々なメリットがあるドルコスト平均法ですが、併せてデメリットについても紹介します。
右肩上がりの相場では利幅が狭くなる
右肩上がりの相場においては、投資を開始した時点で一括投資を行った方が利益の幅が大きくなります。
ただし株式や投資信託においては右肩上がりの相場が見られることもありますが、為替相場において右肩上がりの相場というのはあまり考えられないでしょう。FX取引でのドルコスト平均法においては、このデメリットについてあまり考慮する必要がないといえます。
最終的な相場が下げ相場であれば損が出ることもある
ドルコスト平均法では出口=売却時のタイミングを見極める必要があります。
売却時の相場が平均購入単価を下回っていれば運用損失が発生するため、FX取引を終えるタイミングの判断は重要といえるでしょう。
バリューコスト平均法
バリューコスト平均法とは、米学者のマイケル・エデルソンが1980年代に提唱した投資手法です。ドルコスト平均法と比較されることの多い投資手法といえます。
バリューコスト平均法の仕組み
バリューコスト平均法は、マーケットの変動に合わせて買い付け額を変動させる投資手法です。
バリューコスト平均法では投資を始める際に、最終的な投資金額の目標を設定します。そこから逆算し、目標を達成するためには毎月いくらの投資が必要となるかを計算します。これをバリュー経路といいます。
ただし相場の変動により評価額が増減するため、それに合わせてバリュー経路の変動も必要となってきます。つまり相場が下がった時は評価額が下がるため、投資金額を増やす必要があります。
バリューコスト平均法で投資を行った具体的な例について見てみましょう。
1カ月目 | 2カ月目 | 3カ月目 | 4カ月目 | 5カ月目 | |
価格 | 10,000円 | 13,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 11,000円 |
バリュー経路 | 100,000円 | 200,000円 | 300,000円 | 400,000円 | 500,000円 |
評価額 | 0円 | 130,000円 | 153,000円 | 240.000円 | 550,000円 |
追加投資額 | 100,000円 | 70,000円 | 147,000円 | 160,000円 | -50,000円 |
買付口数 | 10口 | 5.3口 | 14.7口 | 20口 | -4.5口 |
合計口数 | 10口 | 15.3口 | 30口 | 50口 | 45.5口 |
このようにバリューコスト平均法では評価額に応じて投資金額が変動します。
また5ヶ月目には評価額がバリュー経路を超えているため、50,000円の売却を行っています。このように、時には売却を交えながら投資を行っていくのがバリューコスト平均法の特徴といえます。
バリューコスト平均法のメリット
ここからはバリューコスト平均法のメリットについて紹介していきます。
平均購入単価を下げやすい
バリューコスト平均法では下落局面で投資することが多くなるため、ドルコスト平均法と比較して平均購入単価を下げやすい傾向にあります。
目標金額を達成できる
バリューコスト平均法では投資を始める際に投資総額の目標を設定するため、投資を続けていれば目標金額の達成ができます。
バリューコスト平均法のデメリット
様々なメリットがあるバリューコスト平均法ですが、ここからは併せてデメリットについても紹介します。
毎月の出費が変動する
マーケットの動向によって買付金額が変動するため、毎月の支出の見通しが立てにくいといえます。
下落相場においては想定より多額の金額が必要となることもあるでしょう。
マーケット動向への判断が必要となる
先ほどの例で示した通り、相場の変動によって評価額がバリュー経路を上回った時には売却も必要となります。
そのため、資産形成を行う中で売却が必要となることに抵抗がある方には不向きかもしれません。
大きな下落局面に弱い
バリューコスト平均法では下落局面において追加投資額が大きくなるため、手元の資金が足りなくなることがあります。
下落局面がしばらく続くような場面では投資を継続することが難しいかもしれません。
ドルコスト平均法とバリューコスト平均法の比較
ここで改めてドルコスト平均法とバリューコスト平均法の比較を表にまとめています。
ドルコスト平均法 | バリューコスト平均法 | |
買付タイミング | 定時 | 定時 |
投資金額 | 一定 | 変動 |
取引内容 | 買付 | 買付、売却 |
取引方法 | 自動買付 | 手動買付 |
ドルコスト平均法は毎月投資金額が一定であることに対し、バリューコスト平均法は毎月の投資金額が相場に合わせて変動します。
また取引内容についてもドルコスト平均法は買付のみであることに対し、バリューコスト平均法では相場によって売却を実施することもあります。
初心者におすすめの取引方法とは
この記事ではドルコスト平均法とバリューコスト平均法の違いについて紹介してきました。
どちらの投資手法も初心者の方には分かりやすく、FX取引を始めるにあたっておすすめの方法です。
ただしバリューコスト平均法は毎月の投資金額が一定でないことや、下落局面では投資金額が増加する可能性があることから、まずはドルコスト平均法で始めてみることがよいでしょう。