DAICOとは?新しいICOモデルを徹底解説
イーサリアム(ETH)の開発者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が「ICO(アイシーオー)」に変わる「DAICO」という新しい概念を提唱しました。
「DAICO」とは、「DAO (Decentralized Autonomous Organizarion:分散自立組織)」 と「ICO (Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)」 という2つの言葉を組み合わせた造語で、「ICO」という資金調達方法に対して、「DAO」という考え方を組み合わせることで、これまでのICOが抱える課題を解決する新しいICOの仕組みです。
仮想通貨の時価総額ランキングでは2位にランクインするEthereum(イーサリアム/ETH)を考案したヴィタリック氏が提唱するICOに取って代わる新しい考え方ということもあり、非常に注目を集めています。
ICOの抱える課題
2017年は「ICO元年」と言われ、ICOによる資金調達が頻繁に行われました。2017年の1年間でICOによる資金調達額は約4,000億(37億ドル)を超えるなど、資金調達の方法として確立されました。
しかし一方で、調達された資金が有効活用されず、資金を持ち逃げするという悪質なICOプロジェクトも多数発生しました。ICO関連の法規制が整っていないがために悪用する人があらわれ、有望なICOプロジェクトにも疑いの目が向けられるなどICOという手法に対して懐疑的な見方が広がる可能性がありました。
こういったICOが抱える課題を解決することを目的に、ヴィタリック氏が提唱した新しいICOモデルが「DAICO」です。
DAICOの特徴・仕組み
ヴィタリック氏が提唱する「DAICO」は「ICO」と「DAO」を組み合わせた新概念です。特徴としては、3つあります。
開発チームは、ICOで調達した金額のうち、一定期間ごとに決められた金額のみ(TAP)を引き出すことができる
参加ユーザーは、投票権を持ち、プロジェクトの進捗に応じて、TAPの引き上げ、プロジェクトの中止などの意思決定が可能
- ICO実施者の調達資金の持ち逃げを防止
- ICO参加者は投資家のようにプロジェクトの意思決定権を持つ
- セキュリティ面が整備されている
ICO投資者の権利を保障する
「DAICO」では、ICO実施者の調達資金を防止することが出来る仕組みが整っています。
ICOプロジェクトの投資者は、ICO実施者(開発チーム)が一定期間内(約1ヶ月間)に、引き出すことができる資金量(TAP)を決めることが出来ます。
さらに、プロジェクトの進捗状況を見て、次の一定期間に引き出すことが出来る資金量を決める権限やプロジェクトの中止などを意思決定する権限を有しています。この仕組みによって、ICO実施者が調達した金額を持ち逃げするなどのリスクを回避することが出来ます。
- ICO実施者は、一定期間(約1ヶ月)に決められた金額(TAP)のみ引き出すことが出来る。
- ICO投資者は、プロジェクトの進捗状況を見て、TAPの上限金額の引き上げ・プロジェクト中止などの意思決定権を持つ。
DAICOの仕組みは、株式会社のように、投資家の権利を保障することが出来るような仕組みになってきていることが分かります。「DAICO」は、ICOを規制という形ではなく、ICOの仕組みを一歩前進する形に昇華した新概念と言うことが出来ます。
DAICOのステップ・手順
DAICOによる資金調達の方法を簡略化して説明すると下記のようになります。
ICO実施者は、Ethereum(イーサリアム)上にコントラクトを公開することで、DAICOを行なうことが出来ます。
コントラクトには、DAICOの仕組みがプログラムされているため、この方法でICOを行なうだけで、調達資金の引き出し制限(TAP)の設定とトークン保有者によるプロジェクトの運営に関する意思決定に参画する仕組みを利用することできます。
- ICO実施者(開発チーム)は、コントラクト(トークン配布を自動で行うプログラム)をEthereum上に公開する。
- ICO投資者は、コントラクトのアドレスにEthereumを送金することでトークンを取得する。
- トークンの配布が完了すると、発行トークンの枚数がロックされ、トークンのトレードが可能になる。
- ICO実施者は、一定期間(約1ヶ月)に一定金額(TAP)を調達資金から引き出すことができます。
※引き出し金額はプログラムで決められているため、自由に変更することができません。 - ICO投資者は、プロジェクトの進捗に応じて、引き出し可能な一定金額(TAP)の引き上げ、プロジェクトの中止などの意思決定をトークン保有者内で投票して決めることが出来る。
※プロジェクトを中止して、投資金を回収することも出来ます。
ここまで「DAICO」という概念について解説していきましたが、「DAICO」は現時点ではヴィタリック氏が提唱しているのみで、構想段階となっています。今後DAICOのICO方法が実装されることで、これまでのICOで起きていた悪質なプロジェクトが減る可能性が高いです。今後の展開に注目しましょう。