ブロックチェーンソリューションのプロバイダーおよびCardanoの創設企業であるEMURGOグループ(シンガポール、代表取締役社長・児玉健)のEMURGO Indonesia(インドネシア、代表取締役社長・村崎俊介)が、EMURGOトレーサビリティのローンチを発表しました。
今回のリリースに際し、EMURGOは、環境に配慮したインドネシアのコーヒーブランドであるBlue Korintji Coffee(ブルーコリンジコーヒー)と提携し、すでに実装・運用が開始されています。
「EMURGOトレーサビリティ」はブロックチェーン技術を活用し、物品の流通を生産段階から最終消費段階まで追跡をし、不正ができない仕組みとなっています。
さらにEMURGOトレーサビリティを活用ことで、流通経路・価格の透明化だけでなく、得られる収益の一部が生産者に還元されることになります。
今回の提携・ローンチを皮切りにEMURGOはじめ、各企業においてブロックチェーンの実用化促進されていくものと考えられます。
ブロックチェーン業界を先導するEMURGOグループのEMURGO Indonesia CEO村崎氏にお話を伺いました。
- EMURGO Indonesia CEO 村崎俊介氏へのインタビュー
- EMURGOトレーサビリティとは?
- 既存の産地追跡手法との違いは?
- なぜブロックチェーンが必要?
- サプライチェーンの利害関係者が虚偽の情報を入力した場合、それも変更できないということでは?
- このブロックチェーンソリューションは不正行為を防いでくれるのか?
- スマートコントラクトをどのように使うのか?カルダノにはまだスマートコントラクトがないのでは?
- どのブロックチェーンプラットフォームを使用しているのか?またその理由。
- QRコードが持ち去られたり、破損・紛失したりするとどうなるか?
- このプロジェクトを開発しようと思った理由。(LKDとEMURGOの両方の視点)
- 農家にとってのメリットとは?
- コーヒーを飲む人にとってのメリットは?
- コーヒーブランドがこのようなアプリケーションを活用するメリットは?
- どのくらいの農家がこのプラットフォームを利用しているか?
- 初年度は何トンのコーヒーが追跡されるのか?
- EMURGOはこのブロックチェーンソリューションの利用を他の業界にも拡大していくのか?誰をターゲットにしているか?
- デジタル資産や仮想通貨(暗号資産)を利用しているのか?
- 農家やその他の関係者が使い方を学ぶのは難しくないか?教育に時間が必要か?
- 電通や三井物産などの競合プロジェクトとの違いは?
- ユーザーは仮想通貨(暗号資産)を使って農家に直接寄付することができますか?
EMURGO Indonesia CEO 村崎俊介氏へのインタビュー
EMURGOトレーサビリティとは?
EMURGOトレーサビリティソリューションは、ブロックチェーン技術を活用したダウンロード可能なシンプルなアプリケーションの形式で、現代のサプライチェーン産業の非効率性を解決する答えとなるものです。
例えば、安全な認証方法がないために消費財やぜいたく品は偽造に対して脆弱であり、ホワイトラベル製品は効率的なトレーサビリティの手段を持たないために他のブランドと偽られることがあります。
不正表示された食品が消費者に販売されたり、不正に調達された材料が一般的な家庭用品に用いられることもあります。これらは、現代のサプライチェーン業界において起こっていることなのです。
ブロックチェーン技術は、不変のデータにより、供給元から消費者までのエンドツーエンドの製品のトレーサビリティを監査する安全な方法を提供し、サプライチェーンにおける非効率的な中間業者や不要なペーパーワークを排除することでコストを削減し、サプライチェーンにおけるあらゆるステークホルダーが、関連するデータを含む製品の経緯をリアルタイムで透明性をもって検証することを可能にします。
さらに、ブロックチェーンを活用するにあたっては、権限のある人のみがアクセスできるようにしたり、全員がアクセスできるようにしたり、あるいはプライベートとパブリックのブロックチェーンのハイブリッドにするなど、企業やステークホルダーのニーズにあわせて構築することが可能です。
本ソリューションの立ち上げにあたっては、インドネシアの現地のコーヒーブランドであるBlue Korintji Coffeeと提携し、EMURGOのトレーサビリティソリューションを企業として初めて導入することで、すべてのステークホルダーにブロックチェーンによる付加価値を提供することを実現しています。
既存の産地追跡手法との違いは?
ローカルなコーヒー産業における既存のトレーサビリティの手段は、主にサプライチェーンの複雑さのために、不透明かつ非効率的な状態です。
生産者、ロースター、プロセサー、運送会社、カフェ、その他の第三者といったステークホルダーが複雑に絡み合い、データの不変性を維持しながら効率的なやり取りを行う共通のITインフラもありません。
こうした背景が、検証や信頼性の実現を困難なものにしているのです。世界銀行の報告によると、今後のインドネシアのコーヒー産業においては、コーヒー豆の産地や品質の検証による差別化が、ステークホルダーや業界に対する付加価値となっていきます。
EMURGOトレーサビリティソリューションは、ブロックチェーン技術を活用することで、まさにこの問題を解決し、コーヒー豆の産地を確実に検証して付加価値を生み出し、購入価格に対する透明性を増大させ、サプライチェーンにおけるコーヒー豆の流通過程を追跡するために作られました。
(https://consensys.net/blockchain-use-cases/supply-chain-management/#traceability)
なぜブロックチェーンが必要?
ブロックチェーンは地元産業を世界レベルの製品へと導くサポートをすることで、メリットをもたらします。
現在市場では、労働者の条件、製品の取り扱い、自然に対する持続可能なベストプラクティスなどの観点から、ベストプラクティスに従った持続可能な製品が求められています。
ブロックチェーンは単一の企業ではなく、さまざまな企業からなるグループにより管理されていますが、これにより高いレベルの透明性をもたらし、世界のどこからでもグローバルな品質をそなえた製品を生み出すために必要となる信頼性を実現するのです。
サプライチェーンの利害関係者が虚偽の情報を入力した場合、それも変更できないということでは?
情報を削除することはできませんが、修正情報の追記は可能です。
このような修正は過去のエントリーを削除することにはならず、複数企業が合意することも必要です。
誤った情報を入力することは全くの不可能というわけではありませんが、複数の組織の複数の人間がこれを検証するため、非常に困難であると言えます。
こうした人々の意見が一致しない限り、有効と認められないのです。
このブロックチェーンソリューションは不正行為を防いでくれるのか?
完全に防止することは困難ですが、ブロックチェーンは現行のソリューションによる不正防止よりも強力なソリューションを提供します。
これは、複数の人々、複数の組織間でデータを対比することにより実現します。
スマートコントラクトをどのように使うのか?カルダノにはまだスマートコントラクトがないのでは?
スマートコントラクトは、プロセッサーからカフェに至るまで、サプライチェーン全体を通じたコーヒー豆の取引履歴を記録していきます。
発生した取引は、サプライチェーンにおける受領者によって検証されます。
例えば、ロースターからカフェへの委託品は、パッケージの特定のQRコードをスキャンすることで検証されます。
カフェのスタッフはQRコードのスキャンにより、「パッケージが開封され提供された」という記録を消費者に対して作成することになります。
この情報は、EMURGOトレーサビリティソリューションのプライベートブロックチェーンネットワークにおける全ステークホルダーに対し、セキュリティを確保した状態でインプットされ、検証され、透明性を実現します。
このシステムはCardanoネットワークを活用してデータを非公開かつセキュリティを確保した状態で検証し、Goguenで実現するスマートコントラクトの実装に向けた準備を整えることになります。
どのブロックチェーンプラットフォームを使用しているのか?またその理由。
本ブロックチェーンソリューションは、Cardanoの研究主導のブロックチェーン技術に基づき構築され、プライベートネットワークにおけるステークホルダーのプライベートな情報データの不変性を確保します。
QRコードが持ち去られたり、破損・紛失したりするとどうなるか?
カフェはロースターからの委託品の検証を、パッケージに添付されたQRコードで行うため、システムからQRコードを発行するようロースターに依頼する必要があるでしょう。
本アプリケーションでは、QRコードの検証はロースターとカフェの間でのみ使用されます。
このプロジェクトを開発しようと思った理由。(LKDとEMURGOの両方の視点)
エマーゴは常に社会に役立つブロックチェーンユースケースの確立を目指してきました。そして、このインドネシアにおけるプロジェクトはとても社会の役に立つと考えました。
トレーサビリティーにより、価値のあるものを価値があると証明し差別化できることで競争力が高まるだけでなく、ブロックチェーンの活用で取引が電子化され、変更できない信用の蓄積が構築される、そうすることでファイナンスを受けれないUnbankedに属する農家やコレクターも生産ローンを享受できる可能性まで見込めます。
インドネシアのあるシンクタンクは、インドネシアのコーヒー豆輸出・国内消費ともに2045年まで増加すると見込でいます。
農地利用の解放などの規制緩和だけでなく、生産者側が様々な効率化をしていくことも求めてられて行く中、ブロックチェーンといプラットフォームを使って副次的に貢献できることが多々あると感がています。もちろん、Budi氏という良いパートナーにて巡りあったことも理由の大きな1つです。
農家にとってのメリットとは?
生産者から実際に寄せられる悩みとして、自身が生産したコーヒー豆製品がその後どうなっているか、十分に情報がないということがあります。
これは、現在のサプライチェーンの複雑さに起因するものです。生産者はスキャン数や、生産者情報へのアクセス数などにより、自身が生み出した価値に消費者がどのように反応したかを知ることができるようになります。
購入価格の透明性によるメリットを享受し、サプライチェーンに沿った製品の流れを正確に追跡できるようになるのです。
コーヒーを飲む人にとってのメリットは?
現在、コーヒーが何日間棚に置かれていたコーヒー豆から淹れられたものなのか、また、正確な調達方法はどのようであったのか、消費者が知ることは事実上不可能です。
しかし、EMURGOのトレーサビリティソリューションにより、これらは非常に簡単に追跡できるようになり、情報が操作されることもありません。
顧客は、今飲んでいるコーヒーの豆がどのような経緯をたどってきたのか、より透明性の高い情報を入手できます。また、このようなソリューションを通じて提供され、ストーリーがあるコーヒーをサポートするなど持続可能な消費行動を取り入れることもできます。
コーヒーブランドがこのようなアプリケーションを活用するメリットは?
コーヒーブランドは、顧客により高い透明性を提供し、顧客に対してすべての情報を知らせることができるようになります。
コーヒーブランドは、調達元や情報の検証を行い、消費者に閲覧可能な状態とすることで、これまで以上の信頼を獲得することができます。
EMURGOのトレーサビリティソリューションにより実現できるようになった、ブロックチェーン技術の透明性とセキュリティを活用することで、独自の価値を生み出すことができます。
特に、ミレニアル世代や若年層にコーヒー豆を提供する場合、シンプルなQRコード経由で情報を提供し、ブロックチェーン技術に触れる良いユースケースとなることで、付加価値をもたらすことができるでしょう。
どのくらいの農家がこのプラットフォームを利用しているか?
この地域においては500人以上の農家が利用することを目指しています。
インドネシアでは、1,000万人以上の人々が何らかの形でコーヒー産業に関与しています。
200万人の小規模生産者が、インドネシアのコーヒー生産の96%を担っています。
現在、38人の生産者がEMURGOトレーサビリティソリューションを活用し、生産したコーヒー豆をサプライチェーン上で追跡しています。
クリンチ地域だけで、1000人以上の生産者が存在します。教育を介して順次ソリューションを拡大し、地域のすべての生産者がシステムを利用できるようにしていきます。その他の地域と共通の問題を解決するために、EMURGOのソリューションを活用する余地は今後もまだまだあると考えています。
初年度は何トンのコーヒーが追跡されるのか?
クリンチ地域の300トンの生豆を対象としています。
EMURGOはこのブロックチェーンソリューションの利用を他の業界にも拡大していくのか?誰をターゲットにしているか?
現時点では、EMURGOはコーヒー業界のサプライチェーンをターゲットとして、ブロックチェーンソリューションを活用していますが、EMURGOのブロックチェーンソリューションの導入に成功し、その有用性を広く認知していただけるようになれば、多数のステークホルダー間での透明性や信頼性が必要とされる関連産業をターゲットとして拡大していきたいと考えています。
たとえば、配送業や金融、ヘルスケアといった産業などです。海賊版防止という観点からゲーム業界にも活用できそうです。
デジタル資産や仮想通貨(暗号資産)を利用しているのか?
本ソリューションはプライベートブロックチェーンであり、デジタルアセットや仮想通貨(暗号資産)の使用は必要としませんが、将来的に活用の余地はあると考えています。
農家やその他の関係者が使い方を学ぶのは難しくないか?教育に時間が必要か?
EMURGOはすべてのステークホルダーのために、UIやUXをきわめてシンプルにすることに非常に注力しています。
すべての人が使い方を学んだり、ブロックチェーン技術によってメリットを得れるという意図をもって、このような取組みを進めています。
ブロックチェーン技術がどのようにしてメリットをもたらすかについては若干の説明が必要となることもあるでしょうが、アプリケーションの使用やメリットの獲得は、あらゆる人が容易に実現できます。
電通や三井物産などの競合プロジェクトとの違いは?
注力しているマーケットが異なるかもしれません。
電通や三井物産のような取り組みは、既に大きな商流を持つ大企業のサプライチェーンにコンソーシアム型でブロックチェーンを導入する取り組みであると認識しています。
EMURGOは、中小企業も対象にしており、当初より合理性のある価格設定にてテクノロジーソリューションを提供することに注力しています。
ユーザーは仮想通貨(暗号資産)を使って農家に直接寄付することができますか?
生産者と消費者との関係性を今まで以上に緊密にするのは素晴らしいことであると思いますし、私たちもこれについて検討したいと考えています。これにあたっては、地域における規制について考慮の上、慎重に進めていきます。