ドル円に大きな影響を及ぼすFOMCとは?

 

金融市場は様々な経済イベントの動向によって影響を受けることがあります。例えば4年に一度行われるアメリカの大統領選挙はその行方によって経済政策が大きく変わるため、世界中から注目を集めるイベントとなっています。

 

同じくアメリカで定期的に開催されるFOMCも金融市場において重要視されるイベントのひとつです。FOMCの結果によって大きくドル円が推移することもあるため、FXでドル円の取引をしている方はFOMCについてよく理解しておく必要があるでしょう。

 

この記事ではFOMCが世界中から注目される背景について紹介していきます。

 

FOMCとは

 

FOMCとはFederal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略で、アメリカの金融政策を決定する会合のことを指します。日本での「日銀金融政策決定会合」にあたる会合といえるでしょう。

 

FOMCは約6週間ごとに年8回開催され、その議事録は金融政策が決定された3週間後に公開されることとなっています。

 

またFOMCのメンバーは12名となっており、そのうちの7名はFRBの理事、残りの5名は連邦銀行の総裁で構成されています。この連邦銀行の5名はニューヨーク連邦銀行総裁が常任、残りの4名は他地区の連邦銀行総裁から持ち回り制で選出され、1年ごとに交代する決まりとなっています。

 

またそれ以外の地区の連邦銀行総裁についても、投票権はありませんがFOMCに出席して議論に参加しています。

 

FOMCでは失業率やインフレ率、雇用統計など様々な経済指標を材料に、アメリカの経済情勢について議論されます。あらゆる経済指標を基に通貨供給量や、政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の目標を決定し、公開市場操作の方針が示されます。

 

つまりFOMCとは、アメリカの景気が過熱状態にあると判断すると金融引き締め策(利上げ)を行い、反対に景気の後退局面では金融緩和策(利下げ)を行っている機関ということです。

 

FRBとは

 

FOMCを理解するうえでFRBは欠かせない存在です。ここでまずFOMCの主体を担っているFRBについて確認しておきましょう。

 

FRBとはFederal Reserve Board(米連邦準備理事会)の略で、アメリカの中央銀行として公定歩合・FFレートの変更などを行う機関です。とはいえFRBは理事会であり金融機関ではないため、実際の業務はその下に組織される全米12の連邦準備銀行が行っています。

 

この連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)も同じ略称であるFRBを使用しますが、FOMCに関する報道においてのFRBは「米連邦準備理事会」を指しているため、混同しないように注意しましょう。

 

FRBは議長1人、副議長1人を含む理事7人で構成されており、アメリカの物価の安定と雇用を最大化することを目標としています。

 

FRBは主に割引率(公定歩合)の審査・決定、預金準備率の決定、公開市場操作などを金融政策として決定しており、アメリカの経済にとって重要な機関となっています。

 

政策金利と為替動向

 

ここで話をFOMCに戻しましょう。FOMCでの最大の関心事は、アメリカの政策金利の動向についてです。

 

FOMCではアメリカの景気動向により政策金利の利上げ、利下げの実施が判断されています。たとえば2008年にリーマンショックが起きた際にはアメリカでは初めてとなる量的緩和、ゼロ金利政策が実施されました。これによりドル円は一気に100円を割り込み、90円まで円高が進むこととなりました。その後2012年までドル円は100円を上回らない状況が長く続いたのです。

 

米ドルは世界の基軸通貨でもあるため、その政策金利の動向は世界中から注目を集めるテーマともなっています。

 

このようにFOMCの政策金利と為替動向は切っても切り離せない関係にあるといえるでしょう。

政策金利と雇用統計

 

FOMCにて政策金利の動向を決定する際、様々な経済指標が参考とされます。中でも特に重視されている経済指標は雇用統計でしょう。

 

雇用統計は原則毎月第1金曜日に労働統計局より発表され、「失業率」や「非農業部門雇用者数」などが大きな注目を集める指数となっています。

 

アメリカの経済は個人消費が70%を占めているため、アメリカの景気を占う上で国内の雇用状況は大きな材料となります。

 

たとえば利上げが予想される局面において直近の雇用統計の結果が想定よりも悪ければ、「利上げを実施するほど国内の景気回復が進んでいない」と判断され、利上げが見送られることもあります。

 

この際マーケットが既に利上げの実施を織り込んでいた場合、「FOMCは景気回復に時間がかかると判断した」との見方が広がり、一気にドル売りにつながることが考えられます。

 

このようにFOMCで大きな金融政策の判断が下されると予想される際は、その直前の雇用統計の結果にも注目しておくと良いでしょう。

 

FOMCが金融市場に与える影響

 

アメリカの政策金利の動向は、世界中の株価や為替に大きく影響することから大きく注目されているテーマの1つです。

 

セオリーとしてはアメリカの政策金利が上げられるとドル高が進むことが考えられます。しかし事前の予想で既に利上げを実施することが濃厚とされていた場合、マーケットは前もって利上げを織り込んで推移するため、実際にFOMCで利上げが決定されたとしても大きくドル円が動くことはないでしょう。

 

その反対に大きな決定事項はないだろうと予想されていたFOMCで、利上げや利下げなどの重要な金融政策が決定された場合、そのサプライズイベントにマーケットは混乱状態に陥ることもあります。そのためFOMCで金融政策の転換を図る際は、いかにマーケットにショックを与えず利上げ、利下げを実施するかが重要となります。

 

2021年11月のFOMCではテーパリング開始の決定が大きく注目されていました。

 

通常テーパリングが開始されるとマーケットから資金供給量が減るため、ドルが売られドル安が進行することが予想されますが、テーパリングの開始を行うことは既にマーケットに織り込み済みであったため、逆に株価は大きく上昇することとなりました。これはFRBのパウエル議長があらかじめマーケットと対話ができていた証といえるでしょう。

 

このようにFOMCでの決定事項は世界中のマーケットに大きな影響を与えるため、大きく金融政策を転換する際にはマーケットにインパクトを与えないよう事前の働きかけが重要となります。

 

最後に

 

金融市場は様々な経済イベントの動向によって影響を受けますが、中でもFOMCは世界中が注目する重要なイベントとなっています。FOMCではアメリカの政策金利や通貨供給量が決定され、それにより世界の基軸通貨であるドルの行方が大きく変わるためです。

 

またFOMCで金融政策を決定する際、大きな指標となるのが雇用統計です。雇用統計の結果は金融政策の決定に大きな影響があるため、雇用統計の発表後に大きくドル円が推移することもあります。

 

そのためFXでドル円取引を行う際は、FOMC及び雇用統計の結果について必ず確認しておくとよいでしょう。

 

記事の監修者

中島翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。その後国内大手仮想通貨取引所Coincheckでトレーディング業務、新規事業開発に携わり、NYのブロックチェーン関連のVCを経てCWC株式会社を設立。証券アナリスト資格保有 。

Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12



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