FXの資産運用効率を高めるためには、通貨毎の特徴と値動きの主要因を掴んでおくことが重要です。また、今後の見通しを知って適切なトレードスタイルを採用することが利益につながる鍵となります。しかし、現在の市場においては数多くの通貨が存在しているため、効果的な運用ができないということもあります。
そこで本記事では世界第2位のGDPを誇りながら、実に6年近くに及んで高金利を維持している中国人民元について解説します。合わせて、人民元の取引で注意する点や人民元の取引が向いている人についても紹介します。
トレードする前に知っておきたい人民元の基礎知識と特徴
人民元を発行しているのは中華人民共和国(以下、中国)です。
中国では中国人民銀行(PBOC)が為替介入を行っている「管理フロート制」が特徴的です。為替の動きの歴史や現在の特徴をみていきましょう。
人民元の為替の歴史と経済状況
人民元は過去2回の大規模な為替改革により大きな影響を受けました。
かつて人民元の為替レートは二重のレートでしたが、1994年1月に「実勢レート」に一本化されました。これは貿易に使われるレートです。更に同時期、上海に「外貨為替取引センター」が設立されて市場で為替レートが決定される仕組みが出来上がったのです。
また、2005年には通貨バスケットを参考とする管理フロート制を導入し、約2.1%の人民元切り上げが行われました。
また、IMF(国際通貨基金)が設けている加盟国準備資金の補完手段であるSDR(特別引出権)に組み込まれたことで人民元は、国際通貨として認定されました。また、GDP(国内総生産)に関しても2010年の時点で日本を抜いて世界第2位となっています。
こういった背景により、人民元は国際銀行間における決済シェアも英ポンドや日本円といった主要通貨と肩を並べる形で高水準になっています。
2種類に区分けされた取引市場
人民元が持つ大きな特徴の1つとして挙げられるのが、同一の通貨でありながらオンショアとオフショアという2種類に区分けされた取引市場があることです。
人民元は中国の中央銀行であるPBOCによってレートがコントロールされています。原則として中国本土の居住者や、貿易等の実需取引でしか利用できず、国際金融市場に対してクローズドな環境でした。
中国自体は世界的な経済大国でありながら、人民元に関しては世界的に流動性が低いという反比例の構図となっていた過去があります。
その状況を改善させるため、中国は人民元をよりオープンな市場へ解放しようと、2010年に香港にて国外における取引を管轄するオフショア市場を設けました。これらより、従来の管理体制を継続するオンショア市場と区別しています。
現在外国為替市場において取引されているのは原則CNHと表記されるオフショア人民元であり、取引レートもオフショア市場の実勢レートに準じています。またオンショア人民元のCNYとは違って、他の通貨同様自由に取引することができます。
人民元のスワップポイントとは
中国の政策金利は2021年10月時点で4.35%と高水準であり、-0.10%に設定されている日本円と大きな差が発生しています。したがって、人民元は短期目線の売買差益だけでなく、スワップトレードを軸とした中長期的な運用手段が適しています。
ちなみにオンショア人民元のCNYはスワップポイント自体が発生しない注意点があります。あくまでもFXで取引するのはオフショア人民元であるCNHが基本ですが、念のための知識として覚えておくと良いでしょう。
人民元の価格変動要因は何?暴落の可能性や今後の見通しも
人民元の価格変動要因は基本的な3つに加えて、中国特有のものがあります。過去に人民元の変動が大きかった事例や今後の見通しをみていきましょう。
価格変動要因3つと特に注意したいところ
人民元を取引する上では価格変動要因を把握する必要があるため、
①消費者物価指数
②輸出産業の動向を示す貿易収支
③GDPの比率が高い製造業
に関しても欠かさずチェックしましょう。
そして特に注意したいのが、「PBOCによる為替コントロール」です。
中国はこれまで輸出産業の優位性を維持するために以下のような為替相場の介入をしています。
・米中貿易摩擦が激化していた2019年には人民元の基準レートを市場予想よりも低く設定することで元安に誘導した
・2015年も対米ドルで基準値を大幅に引き下げており、一瞬で約400pipsという値幅が変動した
これらは市場において人民元ショック、あるいはチャイナショックと呼ばれており、PBOCによる市場介入による価格変動は今後においても危惧されるため必ず押さえておきましょう。
人民元は暴落の可能性があるのか
人民元の顕著な方向性は発生しにくい状態となっており、長期的には元高方向への推移が見込めると考えられます。
これは中国政府がバブル市場の金融引き締めや、中央銀行の預金準備率を引き下げて金融緩和を図るなど市場をコントロールしているためです。最近の動向としては次の2つで人民元の価格に大きな動きがありました。
・2021年7月に人民元安
…共産党による急成長テック企業の締め付けという内部の権力闘争が原因です。
・2021年9月に人民元下落
…中国恒大集団(中国の不動産開発大手)が資金繰り難になっており、流動性問題の影響が波及するのが懸念されたことが原因です。
中国内部の企業の影響や政治によっても人民元の変動はありますので、中国国内のニュースにも目を向けておきましょう。
今後はどのような動きになっていくのか
今後の人民元の予測をしていく時に重要なのが、新型コロナウイルスの影響です。
コロナ対策に関しては米国などよりも中国が一歩先を行く現状があります。ですが、ロックダウン等を行うと中国の経済の出遅れがあるのも事実です。
その分の経済の出遅れは為替レートに現れると考えられ、人民元は買いやすくなっていくと予想されます。
日本はコロナ対策も遅れ気味で今後も金融緩和が長くなると考えられるため、人民元を買うところから取引に入っていくと良いでしょう。
人民元を取引する際の注意点と人民元のトレードが向いている人
人民元でFX取引をする際は2つのリスクに注意しておくと暴落などを避けることに繋がります。特徴的な人民元には取引に向いている人がいます。
2つのリスクに注意
人民元を扱う際には「地政学リスク」と「イベントリスク」の2つに注意しましょう。
・地政学リスク
…特定地域の抱える政治的・軍事的な事象が活発になることで、地続きの近隣国や往来のしやすい位置に属する地域や世界経済全体の先行き不透明感が拡大することです。広大な国土を持つ中国においてはまさに警戒するべき要素です。北朝鮮の動向や中国の原油輸送業進出の航路封鎖なども人民元に大きな影響を与えます。
・イベントリスク
…事前に予期することが困難な自然災害やテロ被害・政変のことです。直近では中国政府による自国企業への規制強化が短期的なファンダメンタルズに影響を与えた結果、2日程度で100pips近い人民元の暴落を引き起こしています。
人民元の取引が向いている人とは
人民元は中長期的保有のスワップトレードを検討する方にオススメです。
特に金利差の大きい人民元/日本円を採用すればより効率的に運用していけるでしょう。その理由としては人民元には次のようなポイントがあるからです。
・過度な変動が起きた場合、中国当局が抑制する
・人民元/日本円が1通貨あたり17円程度(2021.11現在)と安価なため少額資金で運用できる
・高金利を維持していることから、人民元円のスワップポイントが高い
まとめ
中国では大きな為替市場の動きが過去に2回あり、2種類に区分けされた市場が特徴的です。また、為替市場がPBOCによってコントロールされていることが人民元の価格変動の大きな要因となっています。スワップポイントが高いため、中長期的な取引をしたい方に人民元がオススメです。
しかし、地政学リスクやイベントリスクがあるため、中国国内・世界的な経済動向をしっかりとおさえておくことが成功への秘訣です。