ノックアウトオプションの仕組みは?取引例からメリット・デメリットまで

リスクを限定しながら利益を狙える「ノックアウトオプション」。

 

通常のFX取引に比べ、少額資金から取引ができるため、多くのトレーダーから注目を集めているオプション取引でもあります。

 

この記事ではノックアウトオプションの仕組みやメリット、デメリットについて解説していきます。

 

ノックアウトオプションの仕組み

 

ノックアウトオプションの最大の特徴は「取引の始めに最大損失額を設定する」ということです。ノックアウトオプションは以下のような流れで取引を行います。

 

1.取引する原資産の値動きについて、ブル(上昇)もしくはベア(下落)を予想する

2.値動きの幅から発生するリスクに対して、ノックアウト価格(損切りする水準)を設定する

3.ノックアウト価格に達した際は自動でポジション決済が行われる。予想通りの値動きをした際は利益確定、もしくはポジションを保有し続ける。

 

このように、ノックアウトオプションでは最初に最大損失額をノックアウト価格として設定します。この水準に達した際は自動でポジションが決済されるため、トレーダーはそれ以上の損失を被ることがありません。

 

ノックアウトオプションでの取引は、通貨、金や原油などの商品、株価指数など幅広い金融商品が対象となっています。

 

またノックアウトオプションは買いポジションのみ保有可能となっており、売りポジションは建てられません。しかし「ベア(下落)」のポジションを建てることで、売り注文と同様の効果が得られます。ノックアウト価格に達する前に、ポジション決済を行うことも可能となっています。

 

ノックアウトオプションの取引例

 

ノックアウトオプションの具体的な取引例について見てみましょう。

 

1.1ドル=100円で1ロット(1万通貨)を購入

2.1ドル=99.50円で損切りを行うノックアウト価格を設定する

3.オプション料は5,200円(100円ー99.50円)×1万通貨+ノックアウトプレミアム200円

 

ノックアウト価格の99.50円に達した際は自動的にポジションが決済されるため、オプション料として支払った5,200円が最大損失額となります。

 

このノックアウト価格の水準は自由に設定ができるため、自身のリスク許容度や運用資金に合わせて取引が行えます。

 

反対に1ドル=100.50円まで円安が進行した場合は、5,000円の運用益があげられます。利益額は損失額と違って限定されていないため、ポジションを保有し続けることで大きく利益を狙うことも可能となっています。

 

ノックアウトオプションのメリット

 

ノックアウトオプションの特徴を踏まえたうえで、メリットについて見ていきましょう。

 

損失が限定される

 

ノックアウトオプションでは取引の最初にノックアウト価格を決定するため、最大損失額があらかじめ決定されます。

 

これにより相場の急変などで大きく価格が変動した際でも、最初に決めた金額以上の損失を被ることはありません。通常のFX取引では、損切りを行わない限り損失の幅が広がり続けることもありますが、ノックアウトオプションでは最初に損失が限定できることが大きな魅力です。

そのためノックアウトオプションは、大きな損失を抱えるリスクが怖いと感じる方にもおすすめのオプション取引です。

少額投資で利益が狙える

 

先ほどの例で見たように、ノックアウトオプションでは少ないオプション料で取引ができます。

 

1ドル=100円で1万通貨を購入する際、通常のFX取引では25倍のレバレッジをかけても4万円の証拠金が必要になります。

 

同じ条件の取引でも、ノックアウトオプションでは5,200円のオプション料で取引ができるため、少額資金での投資が可能となっています。したがって「いきなり大きな資金で取引をするのはこわい」と考えている初心者の方でも、少額資金から気軽に取引が始められるでしょう。

 

オプションの対象商品が豊富

 

ノックアウトオプションは通貨、株価指数、商品など様々な金融商品が対象となっているオプション取引です。

 

自身の投資意向やマーケット動向に合わせて金融商品を選べるため、マイナーな金融商品でもリスクを限定しながら利益を狙えるメリットもあります。

 

下落局面でも利益が得られる

 

ノックアウトオプションでは、購入時にベア(下落)のポジションを選択できます。

 

ベアを選択した際は、原資産の価格が下落した場合に利益が発生するため、マーケットの下落局面でも利益が得られる取引チャンスがあるといえます。

 

ノックアウトオプションでは売りポジションを建てられませんが、代わりにベアの買いポジションを建てることで、売りポジションと同様の効果が得られます。

 

ノックアウトオプションのデメリット

 

様々なメリットが挙げられるノックアウトオプションですが、併せてデメリットについても確認しておきましょう。

 

指値注文ができない

 

ノックアウトオプションでは注文方法が成行注文のみとなっており、指値注文ができません。

 

そのためポジションを建てる際には、チャートを注視しながら発注を行う必要があります。「この価格になったらエントリーしたい」という意向がある際は、チャートに張り付きながらチャンスをうかがう必要があるため、手間がかかると感じる方もいるかもしれません。

 

ただしポジション決済の際には、指値・逆指値注文を行うことが可能となっています。

 

FX取引と比べスプレッドが広め

 

ノックアウトオプションでは、通常のFX取引と同様にスプレッドの負担が発生します。

 

スプレッドとは買値と売値の差額のことであり、トレーダーが負担する実質の手数料のようなものです。

 

ノックアウトオプションではこのスプレッドが通常のFX取引と比べ、やや広めに設定されている傾向にあります。

 

IG証券を例に、スプレッドの差について確認してみましょう。

 

通貨ペアFX取引のスプレッドノックアウトオプションのスプレッド
米ドル/円0.20.6
ポンド/円1.02.0
ユーロ/円0.51.1

※2021年11月28日現在

 

このようにノックアウトオプションのスプレッドは、FX取引に比べ広く設定されていることが分かります。

 

スプレッドは取引の都度発生するコストであるため、細かい取引を何度も繰り返すトレーダーにとっては取引コストの負担が気にかかるかもしれません。

 

ノックアウト価格は変更不可

 

ノックアウトオプションでは、最初に決定したノックアウト価格は後から変更ができません。そのためマーケット動向が急変した際には、変動に対応ができないことになります。

 

ノックアウトオプションでポジションを建てる際は、事前に相場動向についてよく検討してからノックアウト価格を決定する必要があるといえるでしょう。

 

まとめ

 

ノックアウトオプションは、取引の初めに最大損失額を設定できることが特徴のオプション取引です。

 

ノックアウト価格に達した際は、自動でポジションが決済されるため、最初に決めた金額以上の損失額を被ることはありません。そのため大きな損失を抱えることが怖いと感じている方でも、リスクを限定しながら取引を行えます。

 

またノックアウトオプションはFX取引に比べ、少額資金から取引が始められることも魅力のひとつです。「いきなり大きな金額を投資するのはこわい」と感じている初心者の方でも、少額から気軽に取引を始められるでしょう。

 

記事の監修者

中島翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。その後国内大手仮想通貨取引所Coincheckでトレーディング業務、新規事業開発に携わり、NYのブロックチェーン関連のVCを経てCWC株式会社を設立。証券アナリスト資格保有 。

Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12



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