IDOとは?
IDOはInitial DEX Offering(イニシャル・DEX・オファリング)の略称で分散取引所(DEX)を介して行われる資金調達方法を指します。2021年に入ってから急激に件数が増え、注目を集めている資金調達方法になっています。
資金調達を行うプロジェクトは分散型取引所を通じてトークンを販売します。販売開始と同時にトークンの流動性プールへのアクセスが可能になり、在庫量に応じて自動的に価格が決定される仕組みになっています。
そのため、IDOではトークンセール開始直後から流動性が確保されるため、短い期間で資金調達を完了させたい企業やプロジェクトに向いているといえます。
最初に行われたIDOはBSCPad上で行われたRaven Protocolと言われており、2019年6月に50万ドル(約5,700万円)を調達し話題を呼びました。
ICOとの違い
ICOはInitial Coin Offerin(イニシャル・コイン・オファリング)の略称で、仮想通貨が市場の一部に認知され始めた2017年頃に流行した資金調達方法です。これはトークンやコインを発行して資金調達を行うというIDOやIEOの基となっている方法で、数多くの企業やプロジェクトに利用される人気の方法となっていました。
最も古いICOは2013年7月のMastercoinだと言われています。その一年後には時価総額ランキングで2位に位置するイーサリアムがICOを行い、当時のレートで230万ドル(約2.6億円)に相当する3,700BTCを調達しました。
市場全体での調達額は2017年が62億円、2018年が78億円とその盛り上がりが数字からも伺えます。一方で、ICOを利用した詐欺や内容のないプロジェクトなどが乱立するようになり、ICOの人気は下火となっていきました。
IEOとの違い
IEOはInitial Exchange Offering(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)の略称で、仮想通貨取引所を介して行われるトークンセールを指します。
IDOとは異なり、中央集権型の取引所を介して行われるため、事前の審査や購入者側のKYCの義務化など他の方法に比べて厳格な体制で行われる点が特徴です。ICOが下火となった直後から徐々に行われる様になり、人気を獲得していきました。
最初に行われたIEOは2019年4月のAdabとされており、複数の仮想通貨取引所で同時にトークンセールが行われました。その他にも有名なIEOとしてはMatic NetworkやCeler Networkなどが挙げられます。
IEOの特徴としては、取扱取引所によるデューデリジェンスが行われる点とトークンセール実施後に同じ取引所に上場されるという点です。また、購入の権利は抽選で決定されるケースが多く、運の要素も含まれています。
2021年にIDOの注目度が急上昇
IDOは2021年に入ってから実施数が急上昇しており、1月から4月までの間で100件以上が行われているとされています。IDOを行うプラットフォームもPolkastarter、PancakeSwap、DAOMaker、BSCPadやGameFiなど多数登場しています。
仮想通貨情報サイトのCryptorankによると、調達額上位10位のローンチパッドにて行われたIDOの平均ROI(投資利益率)はどれもかなり高い数値になっており、低いところで5倍、高いところでは34倍にもなっています。
IDOの事例
ここではこれまでに行われたIDOの中で特に注目を集めた事例をいくつかご紹介します。これまでのIDOはトークンセール価格から大きな上昇を遂げているものが多いのも注目される一つの要因になっています。
RAVEN
上でも説明したようにRavenは最初に行われたIDOとして認知されています。プロジェクトはディープラーニングに特化したソリューションを提供する内容となっており、同分野において高度な技術を有しています。
現在では大企業がリードしているAIやディープラーニング業界において、ブロックチェーンを活用した低コストかつ高速なソリューションを提供することで、市場の再編を目指しています。
トークンセールでは1RAVEN = 0.00005BNBに設定されていましたが、取引開始直後はおよそ3倍の0.00014BNBまで上昇する場面もありました。
BitDAO
BitDAOは大手仮想通貨取引所Bybitが出資するプロジェクトとしてトークンセール開始前から大きな話題を呼びました。Bybitは年間1,000億円以上を出資すると発表している他、著名VCなどから累計で2.3億ドル(約260億円)を集めているなど大規模なプロジェクトです。
BitDAOは分散型金融(DeFi)のプロジェクトに対して投資を行い、そのプロジェクトの成長に伴って利益を得るという仕組みになっています。
投資家や投資機関はBitDAOを通して複数のDeFiサービスで資産運用ができるイメージで、今後はトークン自体の値上がりも期待できます。
IDOの特徴
IDOが注目されるのにはいくつかの特徴があります。IEOやICOで問題視されていた部分が改善されている反面、まだ改善されるべき点もあります。
現在はプラットフォームによってIDOのシステムやルールが異なり、統一されていないのが現状です。
即座に取引が可能
IDOで販売されたトークンはその日のうちから取引が開始されるケースが多いです。これは販売側が分散型取引所にて流動性プールをユーザーに解放し、取引を開始するためそのまま売買が可能になる仕組みになっているためです。
流動性プールはユーザーらから預けられたトークンの集合体で、取引や貸付の際に利用されます。分散型取引所におけるトークンの価格は流動性プールに預け入れられた2種類のトークンの在庫量に応じて自動的に決定されています。
人気のあるプロジェクトであれば、IDO開始直後に価格が10倍以上に跳ね上がることも珍しくありません。また、流動性プールは通常の取引板と異なり、全ての価格帯で流動性が等しく確保されるため、取引高が低い場合でも一定の流動性が提供されます。
ICOやIEOではトークンセールから取引所上場まで時間が開くケースが多いため、この点は大きなメリットだと言えるでしょう。
コストが安く抑えられる
トークンを販売する側のメリットとしては、コストの安さが挙げられます。IEOでは取引所に審査を依頼する必要がある他、プラットフォームを借りて販売を行うため、集客料として多額の手数料が徴収されます。
一方のIDOは中央管理者がいない分散型取引所で販売を行うため、審査などの必要がなくコストがかからないのが特徴です。
ただ、IDOを行うプラットフォームの中には掲載に審査を設けているところもあり、全てのプラットフォームに当てはまるというわけではありません。それらのプラットフォームはIEOの様にプロジェクトの審査を行うため、先述のように高いリターンを記録しています。
公平に参加できる仕組みの整備が追いついていない
IDOの仕組み上、流動性プールを解放して取引を開始する場合、クジラと呼ばれる大口投資家にトークンを買い占められてしまうケースなどもあります。IEOで主に用いられる抽選方式や1人あたりの購入金額に制限がない場合もあるため、資金力で大口投資家に主導権を握られてしまう場合があります。
ただ、こちらも審査と同様に抽選や1人あたりの購入金額に制限を設けている場合などもあるため、一概に当てはまるとは言えません。
また、IEOではほぼ必須となっている本人確認手続き(KYC)がIDOでは不要なケースもあるため、公平性のコントロールが難しいという難点が挙げられます。
IDOの参加方法
ここでは著名かつ最初にIDOが行われたプラットフォームであるBSCPadを例にご紹介します。BSCPadは世界最大手の仮想通貨取引所Binanceが運営するIDOプラットフォームです。
ウォレット作成
まず、BSCPadを利用する際の大前提として、BSC(バイナンススマートチェーン)アドレスとBNBコインが必要になります。まだアドレスを持っていないという方はMetamaskを使ってアドレスを作成しましょう。
https://metamask.io/index.html
上記のアドレスからアプリをダウンロードします。デバイスはiOSとAndroid、Chromeに対応しています。ダウンロードが完了したら画面の指示に従ってウォレットを新規作成します。
パスワードを設定し、シードフレーズと呼ばれる秘密鍵を保存します。スクリーンショットではなく、ネットワークから切り離されたアナログな方法で保管するのがお勧めです。このフレーズはウォレットを他の端末などで復元する際に必要になるため、必ず保管しておいてください。
続いて、シードフレーズの確認画面に進むので、メモしたフレーズを一つずつ入力して行きます。これでウォレットの作成は完了です。
BSCネットワークの追加
ウォレットの作成が完了したら、BSCネットワークを追加します。メイン画面右上の「イーサリアムメインネット」をクリックし、以下の情報を入力します。
ネットワーク名 | Smart Chain |
新規RPC URL | https://bsc-dataseed.binance.org/ |
チェーンID | 56 |
暗号通貨 | BNB |
ブロックエクスプローラーのURL | https://bscscan.com |
これでネットワークの追加が完了しました。「Account 1」の下に表示されている0xから始まる数字列がBSCアドレスになります。このアドレスはETHネットワークでも共通になります。
あとは取引を行う前に、このアドレス宛に仮想通貨取引所からBNBを送金すれば準備は完了です。
BSCPad利用方法
いよいよBSCPadにアクセスして、トークンセール参加の準備をしていきます。プラットフォームは以下のアドレスからアクセスできます。
BSCPadのトークンセールは2つのステージから構成されており、一つ目がBSCPADのステーキング量に応じて割当量が決定されるステージで二つ目が全てのユーザーが同時に購入できるステージになっています。
ステージ1で購入権を得るためにはBSCPADと呼ばれる独自トークンをステーキング(預け入れる)必要があり、以下の表の様に保有量に応じてランクと割当量が決定されます。さらに、IEOと同様にKYCを完了させる必要もあり、参加の障壁はやや高めに設定されています。
ランク | ステーキング量 | プールの重量 |
ブロンズ | 1,000 BSCPAD | 抽選チケット1枚 |
シルバー | 2,500 BSCPAD | 抽選チケット3枚 |
ゴールド | 5,000 BSCPAD | 抽選チケット7枚 |
プラチナ | 10,000 BSCPAD | 10 |
ダイヤモンド | 25,000 BSCPAD | 30 |
ブルーダイヤモンド | 75,000 BSCPAD | 60+ |
記事執筆時点でのBSCPADの価格は270円となっているため、ステージ1に参加するには最低でも27万円を預け入れる必要があります。この資金は流動性を確保するために使われますが、投資家側のメリットとしては、銀行の金利よりも高いリターンが期待できるという点が挙げられます。
BSCPADはGate.ioやPancakeSwapなどの取引所で入手することができます。ステーキングを行う場合は、ホーム画面右上の「Staking」をクリックし、チェックポイントを確認し、数量を入力して行います。
ステージ1で売れ残ったトークンはステージ2で全てのユーザーに同時に解放されます。通常、このラウンドは数分以内に終了することが多いため、開始時間前から待機しておく必要があります。
今後のIDOスケージュールは「ステーキング」横のカレンダーアイコンをクリックすることで確認できます。
まとめ
現在はBinanceのBSCPadをはじめとして様々なIDOプラットフォームが登場しています。各プラットフォームのみで行われるトークンセールもあれば、複数のプラットフォームで行われるトークンセールもあります。
IDO市場は盛り上がりを見せており、数十倍から数百倍を記録するプロジェクトも多数登場しています。しかし、全てのプロジェクトがその様に上昇するわけではありません。プロジェクトの内容や運営、提携しているパートナーなどを事前に調べてからトークンセールに参加することをお勧めします。