先日、日銀が60億ドルに上る米ドルの買い付けを発表しました。目下のドル安トレンドにある中、この多額の外貨買い付けが何を意味するのでしょうか。
外貨買い付けが意味するもの
今回の買い付けの目的は明らかにはされていませんが、コロナウィルスパンデミックにより国内銀行の外貨準備が不足し、対外債務の支払いに米ドルが必要になった際、各金融機関が一斉にドル確保に走る際の市場へのインパクトに備えたものとの見方が強くなっています。
経済の循環が止まり基軸通貨の備蓄がなくなることに備えた対応策と言えるでしょう。一方米ドルは対円、そして世界主要通貨に対し下降トレンドにあり、米国の緊急財政出動による多額の資金の流通の影響もあることから、今後この流れは続くとみられています。日銀として含み損が発生する可能性は否めず、諸刃の剣ともいえます。
市場にもたらし得るインパクトは予測できるか
2020年末時点で米ドルの価値は、相対的に下落するトレンドにありますが、このように経済の停滞による外貨不足により多数の金融機関が米ドルの獲得に動くようなことが万が一あるとすれば、下降トレンドの中でボラティリティが発生し、短期的な相場の急変動が起こる可能性があります。
このような急な動きは対応が難しい。ファンダメンタル分析により事象としてある程度の予測はできるものの、それがいつ起こるかはほぼ予測不可能です。とは言え、FX取引で用いられるテクニカル分析を用いることでこうした動きの兆候をつかむことができる場合があります。急激なMACDの上ぬけ、RSIの急上昇など、短期的な動きを見定めるヒントとなるかもしれないからです。
我々が身構えておくべきこと
なお、今回の日銀による米ドル買い付けは、財務省の外国為替資金特別会計が保有するものを買い取るものであり、市場を通したものではないため、巨額の買い付けによる市場での値上がりインパクトはありません。市場の混乱を避けることが狙いであるため、当面相場における急な混乱の可能性は低いといえるでしょう。
ただし、もしこれが市場における直接的な為替介入であれば、多少は影響を与えることになるでしょう。こうした情報にも日々アンテナを張り巡らせ、経済を有機的に幅広い視点でとらえることは今後の為替相場、ひいては経済の相関を把握するうえで非常に重要なリテラシーとなってきます。